5人が本棚に入れています
本棚に追加
一四回目
「この前は、すみませんでしたっ!」
それでも、アイツは諦めなかった。
あの敗北から一週間後、休養期間が明けた夏休みの終わりの部活。再びアイツと顔を合わせた私は、まず謝られて、それからやっぱり、
「でも、俺はセンパイのこと、好きです!」
告白された。
「……ふーん」
私は結局、これしか言えなかった。
するとアイツは、少し苦しそうな声でこう言った。
「センパイは、やっぱ俺のこと、嫌いですか……?」
そのとき、私の中で何かのタガが外れた。
「……うん、キライ」
「そうですか……」
「キライキライ。アンタなんかキライ」
何度も何度も。ナイフで切り刻むように。
「キライ!」
包丁で心臓を突くように。
「……分かりました」
これでアイツも満身創痍のはずだ。そう思ったのに、
「じゃあ俺、センパイに好きになってもらえるように、頑張りますから!」
彼はまだ、立ち上がった。
立ち去る彼の背中に、彼には聞こえない声で、静かにナイフを投げた。
「そういうところ、キライ」
彼を刺したはずなのに、私のほうが痛かった。ものすごく、痛かった。
最初のコメントを投稿しよう!