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九九回目
もう、うんざりだ。
深く丁寧に腰を曲げ右手をこちらに差し出している彼を眺めるのは。
「だから、嫌だってば。そういうの興味ないんだって」
この台詞も、毎回アレンジしているとはいえ、飽きた。
「……分かりました」
ここまではいつも通りだった。
「卒業式の日にもう一回だけ、センパイに告白します。それでダメなら、諦めます」
九九回目にして、初めて「諦める」という単語が出てきた。ほんの少しだけ驚いたけれど、私はそれを隠して言う。
「ふーん、やっと諦めてくれるんだ」
「まだっス。もう一回――」
「はいはい」
テキトーにいなしつつ、踵を返してから、私は首だけで振り返り、いつものように彼に叩きつける。
「でも私、アンタのことキライだから」
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