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「どれを使っても良いのかしら?」
「はい。俺が使ってしっくり行っても、清子さんに使い易いとは限らないんで……試してみて、やりやすいのを使って下さい」
「分かったわ」
清子は左手にぐい呑みを持ち、右手でヘラをいくつか持ってみて、一本選んで錆漆を掬い取った。
「こう?」
「うん、その調子で。練習なんで、別のヘラも試してみても良いですよ。使い心地が違かもしれませんし」
「そうね」
清子は頷くと、別のヘラを手にとった。試してみて少し考える様子を見せると、初めの物に持ち替えた。
「焦らずに少しずつ、なすり付けるみたいに埋めて、最終的には、元の状態より少し盛って下さい。幸い今の季節は硬化が遅いんで、練習には好都合です」
「使ってる途中で固まっちゃったら、どうするの?」
「漆を混ぜ直してまた使える事も有ります。完全に固まる前なら、ですが」
清子が頷きながら作業を進める傍らで、千都香は静かにメモを取っている。説明の内容を、書面に起こす為だろう。
「……清子さんは、それを続けて貰って、と」
壮介は、掌を開いた。そこには、握りっぱなしになっていた四片の冬季の欠片が有る。
「ん?…………蓋?」
和服の男がその欠片を、目敏く見遣って呟いた。
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