第三章 「ちぃちゃん」は無理

20/37
前へ
/166ページ
次へ
「……常滑か?なんでそんなもん」 「岩。それに、和史も」  壮介は友人二人に呼び掛けながら、開いていた掌をもう一度結んだ。 「済まねえが、もう少し説明したらすぐ行くから、納戸で待っててくれないか」 「え」 「分かった。ゆっくりで良いよ。……じゃあまたね、千都ちゃん、清子さん」  言われた事が飲み込めないTシャツの男を、和服の男が連れ去った──女二人に、満面の笑みで挨拶しながら。 「ほんと油断ならねえな……」 「先生?」  俯いていた千都香が、小さな声で壮介を呼んだ。 「あん?何だ?説明だったら今からすん……」  壮介はそこで言葉を止めた。友人達が来たせいで、だいぶ地が出てしまっている。 「……大変お待たせ致しました、今からご説明致します……で、良いか?」 「……すみません。」 「なんで謝るよ」 「だって」  ちぐはぐな会話にも普段の千都香にも似合わぬ声が、しんとした室内を打った。 「だって……こんなもの直したいなんて、」 「千都香」 「……はい。」  壮介は四つの欠片を掌の上で合わせてみながら、千都香の方を見ずに尋ねた。 「俺は、直したいもんを持って来いっつったんだが……これは、違うのか?」 「……違いません。」 「じゃあ何で謝るよ」 「…………」  千都香からの答えは無かった。  壮介は、答えの無いことは無いままにして、作業の説明をする事にした。  
/166ページ

最初のコメントを投稿しよう!

186人が本棚に入れています
本棚に追加