第三章 「ちぃちゃん」は無理

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「……これは、四つに割れてる。一度に全部の確認は出来ないから、二個ずつ合わせて、様子を見る」 「二個ずつ、ですね」 「ああ。さっき言った通り、ぴったり過ぎても駄目だ。麦漆が食う隙間が必要だからだ。せめて細めのタコ糸くらいの太さは欲しい」 「……それは、どんな器の時でもですか?」  問い掛けられてふと見ると、千都香は説明内容のメモを取っていた。先程、「こんなもの」と卑下した気持ちは、多少は持ち直したらしい。壮介は薄く口元を綻ばせそうになったが、千都香に気付かれてまた機嫌を損ねても面倒だ。やむを得ず、逆に口元を無理矢理引き締めた。 「わざと太い継ぎを作って、器の飾りにする事も有る。手間も材料も余計必要になるから、そんなに度々じゃあないが……これは小さい物だ。太くすると目立ちすぎる。色も同系色にして、目立たせたくないって言ったよな?」 「はい。」 「だから今回は細めで良いんだ。つまり、どの位削るかは、その時々の器の状態と持ち主の要望で決める。……うん、大体良さそうだな。ちょっと見てみろ」 「はい」 「私も、見ても良いかしら?」  机にメモとペンを置いた千都香と欠片を掌に乗せた壮介に、清子が尋ねた。
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