第三章 「ちぃちゃん」は無理

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「ガンガンも、千都ちゃんとお近付きになりたいよねー?」 「えっ?!」 「いや、それは……」 「外出ないから女の子と知り合う機会無いもんねー。見た目が怖い肉体派陶芸家だし」 「和史……お前、からかうにも限度ってもん」 「……情け無いが、その通りだ」 「え゛」  いくら同窓生で昔馴染みの友人であっても、言って良い事と悪い事が有る。  見た目が怖い肉体派陶芸家と言われた男は、確かにその言葉の通りだった。そして、壮介達と同じ学校を出てから大手の窯元に半分修業の様な形で勤めて、最近独立したばかりである。見た目云々以前に、女性と付き合う気持ちの余裕も時間も全く無い生活を送っていたのだ。  各方面に如才なく、何かとモテる着物の男が勝手な事を言って決め付けるのは如何なものかと、壮介は思ったのだが。  当の陶芸家の友人の口からは、意外な発言が飛び出した。 「今まで都市伝説か迷信だと思ってたんだが……有るもんなんだな……」 「……何がだ?」 「ガンガン、何言ってんの?」  質実剛健という単語が似合いそうな男にしては珍しく、十数年の付き合いの間でも聞いた事も無い様な、どこかふわふわとした口調の呟き。  困惑した壮介達が耳を疑う一言が、ほわほわとした空気に包まれて、厳つい男から告げられた。 「……こいつが、一目惚れって奴なんだなあ……」  
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