第三章 「ちぃちゃん」は無理

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   * 「立岩さん、お茶のお代わりいかがですか?」 「ありがとうございます。頂きます」  この部屋で未だかつて見た事の無い、和やかな昼食の光景だ。  壮介は千都香が淹れた番茶をすすりながら、ぼんやりと食卓──ではなくて、作業机の上を眺めた。    *  壮介達が話を終えて戻ると、千都香と清子は作業机を片付けて、買ってきたパンやサンドイッチや飲み物の類を並べていた。  そこで、生徒二人は和服の男・長内和史(おさない かずふみ)とTシャツの男・立岩毅(たていわ つよし)を正式に紹介されて、昼食を共にしても良いかどうかと尋ねられたのだ。  清子と千都香は、二つ返事で承諾した。 「ご親切に、ありがとうございます。……これ、詰まらない物ですが……お昼ご飯の一品になるかと」  和史が持参した手土産を満面の笑みで、壮介ではなく清子に手渡した。千都香にでは無かったのは、毅の「一目惚れ」発言への配慮だろう。  食器や茶器が用意され、椅子がどこからか持って来られて、大人数で食べやすい様にと、大皿に切り分けたパンが並べられた。 「……あら?!(ます)寿司ね!」  和史の手土産の袋を開けていた清子の顔が、ほころんだ。
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