185人が本棚に入れています
本棚に追加
*
「立岩さん、お茶のお代わりいかがですか?」
「ありがとうございます。頂きます」
この部屋で未だかつて見た事の無い、和やかな昼食の光景だ。
壮介は千都香が淹れた番茶をすすりながら、ぼんやりと食卓──ではなくて、作業机の上を眺めた。
*
壮介達が話を終えて戻ると、千都香と清子は作業机を片付けて、買ってきたパンやサンドイッチや飲み物の類を並べていた。
そこで、生徒二人は和服の男・長内和史とTシャツの男・立岩毅を正式に紹介されて、昼食を共にしても良いかどうかと尋ねられたのだ。
清子と千都香は、二つ返事で承諾した。
「ご親切に、ありがとうございます。……これ、詰まらない物ですが……お昼ご飯の一品になるかと」
和史が持参した手土産を満面の笑みで、壮介ではなく清子に手渡した。千都香にでは無かったのは、毅の「一目惚れ」発言への配慮だろう。
食器や茶器が用意され、椅子がどこからか持って来られて、大人数で食べやすい様にと、大皿に切り分けたパンが並べられた。
「……あら?!鱒寿司ね!」
和史の手土産の袋を開けていた清子の顔が、ほころんだ。
最初のコメントを投稿しよう!