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「おい、和史!そりゃ大袈裟だろ!」
「うん、針は無いよな、針は。せいぜい棒だ」
「岩!」
壮介が否定した横から、毅が冗談混じりに同意する。
「大体、その『痩せた』ってのは、学生時代の話だろうが。今は、そんなに食ってなくないぞ」
「……だけど、先生」
その反論を聞いた千都香が、上目遣いで壮介をじっと見た。
「冷蔵庫の中、お酒しか入ってませんよね……」
「っ!!」
「そうだ!良い考えが有るわ!」
千都香に睨まれ、寿司を切り終えた清子ににこにこと笑い掛けられて、壮介は微かにぴくっと怯えた。
「これからずっと、教室は午前開始にしたらどうかしら?そうしたら少なくともその日は、先生はお昼ご飯を食べるでしょう?」
「ああ、良いですね!」
「うん、なるほど」
「清子さん、さすが!そうしましょう!」
三人が、口々に賛成する。
告げられたのがとんでもない提案ではなかった事にほっとしながら、壮介はもごもごと口を開いた。
「……まあ、時間は、生徒さん方の都合に合わせるからな……」
「先生も、それで宜しいのね?……良かったわあ!ひとりでご飯食べるって、味気ないものね」
食べましょう、と清子に笑顔で促され、一同は食卓代わりの机に着いた。
アルコールは無いが和気あいあいと盛り上がり、ちょっとした宴会の様だ。三人では時々飲んでいるが、それとは違って、なんとなく華やかだ。
(……女が入ると賑やかになるもんだな……)
楽しげな面々を見ながら、壮介は先程納戸で毅と交わした会話を思い出した。
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