第三章 「ちぃちゃん」は無理

31/37

184人が本棚に入れています
本棚に追加
/166ページ
 昼食の後は、教室の続きだ。  そこまで見学してはお邪魔だろうし、仕事も有るしという事で、二人は帰って行ったのだ。  帰る前に千都香は、和史がホームページを作った事を壮介に聞いて、手直しの為に会う約束をした。別のどこかではなくここで会うのが良かろうという事になり、壮介も同席して意見を聞くことになっている。  そして毅も何故か急に自分のホームページを作りたくなったらしく、同席して見学する事になった。  和史は清子とも何やら話して親しくなったらしく、帰り掛けに名刺を渡していた。学生時代から和史の愛想の良さは際立って居たが、家業を継いで益々磨きが掛かった様だ。自分に無い和史の如才の無さが、壮介には時折羨ましい。 『……ガンガンにして欲しくない余計な事って、千都ちゃんへの愛の告白とか?』 『馬鹿かお前はっ!?千都香がしたい様に金継ぎすんのにケチ付けんなって言ってんだよ!!』  二人を見送っていた壮介は、毅に釘を差した一件を和史に混ぜっ返された事を思い出しそうになって、頭を振った。 「先生?」 「……あん?」 「どうかしましたか?」 「……食べ慣れねぇ昼飯食ったから、頭がフラつく」 「お酒の飲み過ぎか、寝不足なんじゃないですか?先生はもう職人さんなだけじゃなく、先生になったんですから、私達の為に、ちゃんと節制して下さい」 「へいへい。……午後の教室始めるぞー」  壮介はちょうど良い高さに有った千都香の頭に手を置いて二、三回混ぜると、作業部屋に向かって踵を返した。  
/166ページ

最初のコメントを投稿しよう!

184人が本棚に入れています
本棚に追加