第三章 「ちぃちゃん」は無理

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「下準備は、午前中清子さんが欠けにしてたのと同じ要領だ。さっき漆を塗った所を、濡らした紙ヤスリで軽く擦る」 「はい」 「そこに麦漆を塗って、欠片を付ける。ズレない様にマスキングテープで止めて、硬化させる。……まず、二つを付けろ。それを合わせる」 「分かりました」  千都香は、四つの欠片を二つずつに分けた。二つを合わせる為、割れた面に竹べらで麦漆を塗り付ける。塗った欠片を二つ合わせて、壮介を見た。 「これで、大丈夫でしょうか?」 「ああ。……止めるから、押さえてろ」  千都香が持っている欠片を、壮介が動かない様にテープで固定した。  残り二つも同様にして、最後に止めた二欠片ずつを合わせた。 「これ、一人でやる時はどうしてるんですか?」 「あん?テープを先に切っといて、今と同じ様に押さえて止めてるぞ?」  なんということも無い様に、答えが返って来たが。  ずれない様に押さえながら、テープ止めをしなくてはいけないのだ。千都香なら、一人でやったら二つをずらしてしまうだろう。 「先生、器用……」 「慣れだ、慣れ。次は一人でやってみるか」 「……少しずつでお願いしますぅ……」  メモをしながら俯く千都香に、壮介はふっと笑った。 「付けた所の表面をならして、少し麦漆を盛っておけ。乾くと多少縮むからな。盛った後がはみ出したら、今のうちに綺麗にしておけよ。固まると、取れにくいぞ」 「……分かりました」  千都香はメモを置くと、付けた表面の処理を始めた。
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