第三章 「ちぃちゃん」は無理

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「良いか?!そのでっかい目ん玉ひん剥いて、よーーーく見ろ!!これはなぁ、拡!大!鏡!だ!!!!」 「かくだいきょー?……老眼鏡と、どこが違」 「知らねーのかお前は!拡大鏡ってなルーペだ、ルーペ!!眼鏡型の、ルーペ!!」 「あー……あの、お尻で踏むやつ……きゃん!!」  壮介は、へーとかほーとか言って新聞紙を読んでみている千都香の顔から、再び無理矢理ルーペをむしり取った。 「金継ぎってのはなぁ、細かい所を見ねえといけねえ時が有んだよ!……その為の必需品です、良かったらどうぞ」  千都香に向かって吠えていた壮介は、途中ではっと我に返って清子に眼鏡を手渡した。  「先生っ、ひどいです……!今の、パワハラですよパワハラっっ!」 「お前こそ、『老眼鏡』って何だよ?!嫌味か?!それこそ、なんとかハラスメントだろうが!!俺は、まだ、三!十!代!だ!!!!」 「二人とも、ほんとに仲良しねえ……」 「ぅ!!」 「っ!!」  にこにこと眼鏡を掛けながらの清子の一言に、壮介と千都香は押し黙った。 「……あら!これ掛けると、釉薬がよく見えるわぁ!家に有るから、これから持って来るようにするわね!」 「……はあ……お願いします……」  こうして「金継ぎ教室・但しお試し」の初日は、大騒ぎながらもまずまず充実した内容で終わったのだった。
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