第五章 機械音痴と報酬と

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「壮介がそういうの得意じゃないの、俺達思い知ってるよね?だから、俺が作ってあげて、直すのも千都ちゃんと相談してるんじゃん」  和史の言葉で、毅の脳裏には学生時代から時折目にして、それなりに被害も被っている、壮介の情報機器との闘いの数々が蘇った。 「……それは……そう、だな……」  和史や毅と違って、壮介は入学前に一度一般企業に就職している。壮介だけ年齢が高いのは、その為だ。  就職はしたものの、壮介は事務機器をほとんど扱えなかった。やっているうちに憶えるだろうとか、マニュアルを見たら分かるだろうと思われたのだが、それらの予想は(ことごと)く期待外れに終わった。壮介とデジタル機器は、徹底的に相性が悪かったのだ。それだけが原因ではないのだが、結果的に壮介は新卒で入った会社を辞めて学校に通い直す事になり、そこで和史達と出会ったのだった。 「おい。乗り気じゃねえなんて、俺がいつ言ったよ」  壮介は、毅と和史による罰の悪い自分評を無視して、千都香に反論することにした。 「なら、ちょっとくらい何か言ってくれても良いじゃないですか。良いとか悪いとか、好きとか嫌いとか」 「全部任せるって言っただろうが」 「え」 「さっきからこいつらが散々な事言ってるだろ。そういうの、本当に分かんねえんだよ。言ったよな?お前の好きにしてくれって」 「あれって……」 「うっわー」  あの「全部任せる」はそこまでの「全部」だったのか、と千都香が呆然としていると、またもやそこに茶々が入った。 「『私を全部あなたの好きにして』って、なんか、卑猥……」 「うっ」 「えっ」 「おい!誰がそんな事言ったよ!!」  和史のおふざけに、毅と千都香と壮介が、あ行の後半の様にハモった。
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