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「頂きます!」
「おー、食え食え」
私は結局、ミニスパイシーココナッツカレーセットを頼んだ。飲み物と、プチロールケーキかフルーツカクテルかどっちかがデザートとして付いて来るという、お得感溢れるセットだ。
「先生、昔からここに来てるんですか?」
「学生の頃から、この辺に用が有る時に時々な。最初に来た頃はこんな小綺麗じゃ無かったけどな」
「へえ……」
先生は、食べ物に興味がない。今日みたいにご飯食べようって言い出すなんて、珍しい。
その先生が、こんな感じの良いお店を知ってるなんて。
学生の頃、誰かが先生を連れて来たのかな。
その頃は、私はまだ小学生だったんだなあ……。
「どうした?辛いか?」
「からくないですっ」
少し辛いけど、辛いかって心配される程辛くない。子供じゃないんだしっ。
「マンゴー入って無さそうだから、これもやるよ。甘いもんで辛いの誤魔化せ」
「……ありがとうございます……」
私が選ばなかったフルーツカクテルを、先生がトレーに乗せてくれる。甘いもんでご機嫌取られた。子供じゃないのに。
先生は私より七年分たくさん、生きてきた思い出がある。そのうち私と重なってるのなんか、まだ二年も無い。
私は先生の、三十五分の二、か。
とっくに食べ終えて水を飲んでる先生を、こそっと見る。
こんなとこでも、いつもの作務衣。いつでもどこでも、変わらない……それは、腹が立つ程に。
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