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電話が鳴った。
骨董品屋さんにあるみたいな黒電話が、ここではまだ現役だ。
先生は「停電でも使えるから効率的なんだよ」って言うけど、留守電も付いてない滅多に鳴らない電話は、効率的なんだろうか。
電話は、ずっと鳴っている。
出なくていいって言われてるけど、こんなに鳴るなら、出た方がいいかな。
……なんて言って出よう。受話器に手をかけて、ちょっと迷って思い切って取った。
「お待たせしましたっ、牧ですっ!」
……牧じゃないけど、平取だけど。
お留守番なんだから、代理なんだから、変じゃないよねっ?!
突然女が出た!って、相手の人に不審に思われたらどうしよう……!
『千都香ちゃん?』
「あ。長内さん?」
ほっと力が抜ける。手が汗ばんで、持ってる受話器が滑りそう。
『壮介居る?』
「……え?」
思いも寄らないことを言われて、返事が詰まった。
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