第1章〜ハンバーグ〜

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「タカ。入るぞ。」  閻さんは一言だけ声をかけると、扉を押して中に入った。中に入ると様々な調理器具が並び、シンクの中はたくさんのお皿が泡にまみれて置いてあった。そう連れてこられたのはキッチンだった。閻さんがタカと呼んだ人物はすぐにこちらに振り向くとペコっと会釈をした。その顔は太い眉毛に目力のある大きな目、鼻も口もとても大きく、存在感を発揮していたのだが、そのバランスが絶妙で、また閻さんとは違うタイプなのだがアスリート系イケメンだった。そして、体も天井に届きそうなほど大きく、大きな体をかがめながら手には泡をいっぱいつけお皿を丁寧に洗って片付けをしていた。そのギャップが何とも言えず、私は不謹慎にもかわいいなと思ってしまったのだ。 「閻様。どうかなさいましたか。」  そのタカと呼ばれた男の人は、すぐに手の泡を洗い流すとエプロンに入っていたタオルハンカチで手を拭きながら、こちらに向かって歩いてきてくれた。 「タカ、紹介しよう。新しくこちらにいらっしゃったお客様、雛だ。」 「そうですか。雛さん。初めまして、タカと申します。」  タカさんが手を差し伸べてくれたので、私も挨拶をしながら手を握って握手をした。その手はとても大きく、洗い物をしていたはずなのにとても温かく安心感のある手だった。 「ところで、閻様。こちらにお客様を連れて来られるなんて初めてのことじゃないですか。」 「そうだったかな。実はな、雛は料理がとても得意でぜひ私に料理を振舞ってくれるという。何か食材は余っているか。」 「へっ?」  私は何も聞いていなかったため、素っ頓狂な声を思わず出してしまった。 「はい。まだ、お昼用の買い出しはしていないのであまりたくさんはありませんが、こちらに。」  タカさんは冷蔵庫のようなところに案内するとその冷蔵庫を開け、どのような食材があるのかをガサゴソと探し始まった。作業台の上には見た目は豚肉の細切れのようなものと牛肉の切れ端が少しずつ、野菜も玉ねぎ、じゃがいも、人参、大根、しそ、卵が出てきた。私は食材を見た瞬間、レシピを決めたのだが、まだ足りないものがあるので確認することにした。 「タカさん。お麩と牛乳はあるかしら。後、お豆腐もあるとより良いわね。」
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