ープロローグー

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 その山の麓まで来てみるとやはり中々の階段で旅館の影が辛うじて見え、何故か逆にやる気がみなぎってきた。  よっし。頑張って登るぞー。これでも私は学生時代ソフトボールで下半身は鍛えたんだから。ここ最近は運動不足だけどね。  自分の中で目標を決め、中盤までは休まず進もうと階段を登り始めた。すると不思議なことに数段登ると旅館の入り口までついてしまった。旅館の前には観音開きの大きな門がそびえ立っており、その門はご丁寧に解放されていた。その門には「狭間宿 妖堂」とそれはそれは綺麗な文字で表札が書かれていた。  そこから少し覗くと下で見るよりもっと大きく、どこかの高級旅館のような外観で、二階建てで綺麗な等間隔で窓に灯りが灯っていた。それがまた綺麗な灯りでイルミネーションをみているかのようだった。 「えっ?灯り?」  先程まで、光の中におり、空も青空に晴れ渡っていたはずなのに空は突然綺麗な赤い空になっており、黄昏時のような感じを受けた。  突然空が変わったような気もしたけど、私も想像力豊かな夢を見るわね。  自分の夢に感動してクスクスっと一人で笑うとその高級旅館の入り口からそこへ入ってみることにした。 「ごめんください。」  そう言いながら扉を開けると目の前には広々とした空間が見えた。高級旅館ならすぐに従業員の方が出迎えてくれても良さそうだが、私の呼びかけに反応するものはいなかった。おかしいなとは思いつつも玄関をマジマジと観察して待つことにした。玄関は石畳になっており、二段上がるとスリッパが履けるように10足ほど用意されていた。目の前には下の方に障子の小窓のようなものが着いておりそのまま上に目線を向けると、草書体で私には読めない文字で何かが書いてあったが、何故かとても温かい気分になった。  玄関を暫く観察していると、パタパタとこちらへ歩いてくる音がした。やっと来たと思いつつここから中は見えないので、きっと中居さんか女将さんかが歩いてきているのだろうと構えていたのだが、そこに現れたのは綺麗な銀色の長髪で切れ長の目。瞳の色は綺麗な金色。背はとても高く、その顔はこの世のものとは思えないほどの美青年がステキな黒の着物姿をして現れた。しかし、その綺麗な顔は不機嫌そうに歪んでいた。
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