第1章〜ハンバーグ〜

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「はい。お待ちどうさま。」  私が席までハンバーグを持っていくと既に3人はカトラリーを用意しており食べる気満々という状態だった。そのお腹を空かせたライオンの中に子羊を入れるかの如く私はハンバーグをことっと置いた。続いて閻さんも直ぐにハンバーグを置くと、いただきますと掛け声をかけ、すぐさまハンバーグに手をつけた。 「なんだこれは。ハンバーグと言うものは本来こう言うものなのか?」 「確かにこれは美味しい。」 「切ってみると断面に肉汁がジュワッと浮かび、口に入れた時にさっぱりした大根おろしと濃厚な肉汁が混ざってとてもちょうどいい形になっている。」 「と言うか、タカさん食レポ上手ね。」  みんな美味しい美味しいと食べてくれる姿をみるととても心が温かくなってくる。メイさんなんて夢中でハンバーグを掻き込んでいた。  本当はこう言うお店を普通に開きたかったな。  今、私は、あの世とこの世との狭間の宿にたどり着いてしまった。自分がいつ帰れるかもわからない。そんな状況で料理を作らせてもらっただけでも幸せだ。もし、このまま戻ることがなかったらここでの思い出を胸に焼き付けてあの世に行こう。そう誓った。そう誓ったのだが、私のしんみりとした気持ちを閻さんが突然打ち破った。
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