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「雛。突然のお願いで申し訳ないが、ここで料理長をやってくれないか。」
「へっ?」
私は閻さんの突然のお願いに全く対応できず固まってしまった。
「実は、このタカは仮の料理長なのだよ。本当はここの支配人の様なものでここの管理をしてくれていたんだ。しかし、料理長が突然現世に戻ってしまってね。唯一現世とここを行き来出来る知識人のタカに料理長を兼務してもらうことになったんだよ。ただ、タカは知識はあるが料理の腕は皆無で本当に酷いものだったんだ。調理したものたちは食べられず、手を加えてないものだけが唯一ここで食べられるものになってしまったんだよ。」
「そうなんだ。元からずっとあのクオリティだったらここにいる人たちの味覚を疑うところだったわよ。」
私は腕組みをしてうんうんと頷いた。そして改めて頼まれたことについて考えてみた。ここで料理長をするってことは料理がたくさん出来る。そして色んな施策も出来る。家ではあまりお金の無駄遣いは出来ないからやりたいことも出来なかった。
これはチャンス。
私は数秒で快い返事をした。
「もちろん。やらせて。私もいつまで出来るとは約束できないけど、精一杯お手伝いするわ。」
「それは有り難い。よろしく頼むよ。」
閻さんは手を私の方に差し伸べると握手を求めてきた。私もその大きくて綺麗な手を握るとニコッと閻さんに微笑みかけた。
私は生きているのか生きていないのかわからないこの世界でお店ではないが、食堂を切り盛りすることになったのだった。
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