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「おい。お前、大丈夫か?」
私は自分でも気がつかず泣いていた。それと同時に記憶が戻ってきて、ポロポロと涙が頬を伝った。
「よかった…。」
「よかった?」
その綺麗な男性は全く意味がわからないというような顔をして私に聞いてきた。
「私、男の子を助けようと思っていたんだけど、助けられたか不安だったの。でも、かなり元気そうね。よかった。」
「自分が身代わりになったこと、悔しくは無いのか?」
その綺麗な男性はどうしても解せないという顔をして再び私に聞いてきた。
「悔しいか…。うーん。少しは悔しいのかな。それよりも今はあの男の子が助かって嬉しい気持ちの方が強いかな。」
私は出来るだけ笑顔を作り綺麗な男性に心配させまいと微笑みかけた。
「…お前は心が綺麗なのだな。」
綺麗な男性は私の頬を両手で包み、また私の瞳を覗き込んできた。その瞳に吸い込まれそうになりながら私はその場を動けずにいた。そして、その男性は私を抱きしめて頭を撫でてくれた。その心地よさに身を委ねながら、私はまた涙をこぼした。
ここはもしかしたら、あの世なのだろうか。
私は自分がこれからどうしていけばいいのか、不安な気持ちの中でその男性の背中に手を回し着物をギュッと掴んだ。
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