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「どういうことだ。婆は何をしていたんだ?」
「確認してまいりますか?」
辺りは突然慌ただしい雰囲気になった。ロクさんと筋肉質の男性はアワアワと閻さんに指示を求めた。しかし、閻さんは私の方を向き直し、落ち着いた声で話しかけてきた。私は全く理解が追いつかず、頭の中はハテナだらけだった。
「雛。お前は一体何者だ?」
「私?私は私だけど?」
「何をバカなことを言っている。死人でないものが河原を通れるわけなかろう。それに奪衣婆の目をかい潜ってくるなんて不可能に近い。」
ロクさんはすくっと立ち上がって腰に手をあてた。
「そのおばあさんって誰よ。だって、誰もいなかったもん。」
「誰も?」
三人はより驚いた顔をしてその場に立ち尽くしていた。
「メイ。賽の河原を見てきてくれるか?」
冷静に閻さんは筋肉質の男性に指示を出した。筋肉質の男性はメイさんと言うのか、すぐにメイさんは立ち上がって部屋から出て行った。外に確認しに行ったのだろうか。
「それよりも雛。きちんと話をしようか。」
「ええ。私も聞きたいことが山ほどあるの。」
「では、二人で静かに話ができるところにしようか。」
閻さんは立ち上がり着物の中に腕を入れ組んだ。そして、また廊下の方に歩き出した。その後ろ姿をみながら、私も置いてかれないように後をついて行くのであった。
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