第七話 バット

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第七話 バット

 大番狂わせを演じた僕たち、大らかソフトナ高校。  うれしい反面、穏やかに過ごそうと思っていた高校生活が、『目指せ甲子園!』と、周りが騒がしくなってしまうのだろうか?  試合からの帰り道、バッティングセンターのおじさんに、報告がてら、ちょっと寄ることにした。 「こんにちは~!」 「よ~っ! たもっちゃん! 打っちゃったね~ッ!」 「え~ッ! もう知ってるんですかッ?!」 「あったりめぇ~よ! 代打逆転さよなら満塁ホームランって、もう、漫画やないか~ッ!」 「ありがとうございます!」 「これ、サービスや!」 「えーッ! ありがとうございます!」  おじさんが、バッティングセンターのコインを10枚、つまり、25球×10ゲーム分も下さった。 「でね、ここのハイスピードって、150km/hまでのはずなのに、何か、ここで打ってたハイスピードの方が、めちゃくちゃ速く感じちゃって、野菅のストレートにも、落ち着いて対応できた感じなんですよね~」 「そうなんだね♪」 「もしかして、ここのハイスピード、150km/h以上、出てたりしますぅ?」 「170km/h、っちゅ~てね~♪」 「えーーーッ!」  驚愕(きょうがく)の事実ッ! 「たもっちゃん、コレ、内緒だよ!」 「はい!」 「ここんとこ、君がハイスピードのゲージで打ってくれてたときさ、マシンの設定間違ってたみたいでね、170km/h出てたみたい♪」 「えーーーッ!」 「新しいマシンでさ、まだ、操作慣れてないんだよね~、ごめんねごめんね~!」  いやいや、そのおかげで、しっかり打てたんですけど。まぐれが重なって勝った試合も、こんなところから、まぐれが始まっていたのかと、思わず笑けてしまった。 「あッ! 代打逆転さよなら満塁ホームラン男~ッ! 観てたよ~ッ!」 「あ、赤井さ~ん!」 「カッコよかったよ~ッ!」 「えっ? 観に来てくれてたんですか?」 「まさかまさかッ! こんな猛暑日の炎天下、スタンドで応援なんて、無理だって!」 「でも、今、『観てた』って……」 「学校の視聴覚教室でさ、予選の中継やってるケーブルテレビ、みんなで観てたの♪ ほとんど、オータムくんのファンばっかりだったけどね♪」 「あ、そうだったんですか!」  モテ男オータム先輩の、高校生活最後の大会なのに、全然ファンの女の子たちも来てなくて、スタンド、ガランガランッて、不思議だな~って思っていたら、そういうことだったんだ。 「クーラーガンガンに冷えてる教室でさ、みんなとよく冷えた麦茶やコーラ飲みながら、スルメや枝豆食べながら、『かっ飛ばせ~!』って、最高だったよ~♪」 「……って、おっさん化してますよ!」 「『赤井おっさん化現象』、なんつって♪」 「それにしても、バッティングセンターで赤井さんに会うって、珍しいですね」 「ストレス発散に、ときどき来てるよ」 「へぇ~」 「昔、ソフトボールしてたし♪」 「あ、そうだったんですか!」  すると、赤井さんは、真面目な表情で僕を見つめ、唇をエロく舌舐(したな)めずりし、 「そうなの。私、"タマ"を握ったり・手のひらで転がしたり、"棒"を握ったりしてたの」  と、答えた。僕は、赤井さんの、あまりのエロさに、生ツバを、ゴクリッ!  赤井さんは、僕の目を見つめたまま、僕の方へ、ゆっくりと近づいて来た。一瞬、抱きつかれるのかと思う感じで、左手で僕の右肘(みぎひじ)を触り、右手を筒状にして、僕の左耳にエロくささやいた。 「私、"タマ"を触ったり、"棒"を触るの、大好きなの……」  そう言うと、赤井さんの左手は、スルスルスルスル~……っと、僕の右肘から下へ下へと下りて来た。 「次の試合も頑張って欲しいから、私の気合い……、注入してもいい……」 「は、はいッ!」 「森林くんの……、"バット"……、ギュッと握ってもいい?」 「お、お願いします……」  エロさ全開でささやかれ、今から何が起こるのか分からず、僕は目を閉じて、再び生ツバを、ゴクリッ! 僕は、緊張と興奮で、意識が飛びそうになりながらも、股間には、しっかりと意識を集中させていた……。すると、 ー カキーンッ! カキーンッ! ー 「次の試合も、かっ飛ばすんだぜーッ! 森林~ッ!」  赤井さんは、スローボールのバッティングゲージで、僕の金属バットをギュッと握って、気合いを注入するがごとく、快音を響かせた。  えっ? いつの間に、僕の耳元から、赤井さんは離れたんだ? 全く、その気配を感じさせなかったぞ! (しのび)末裔(まつえい)か?  で、おいおいッ! エロトークも何もなかったかのごとく、打ちまくっとるで、この(ねえ)さん!  僕は、またまた、お(また)なジョークで、赤井さんに(もてあそ)ばれた! 『赤井さんに恋をして~Season2~』 超・妄想コンテスト : テーマ『ひんやり』 2019(令和元)年8月11日(日)〆切 応募作品 『赤井さんに恋をして~Season2~』 第一話~第七話にて応募
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