夜の出会い

3/3
7人が本棚に入れています
本棚に追加
/33ページ
 世の中には変な人がいる。  自分とは何ら関係のないことを考えたところで、メリットなんて何もない。ならなぜ俺はこれを手に取ったか……。  粗さの目立つ削り具合。円柱の中心に集まるように先を尖らせている。それが不穏なものを感じさせた。それに対し、女性が使ってそうな、四隅に花の刺繍を施したピンクのハンカチは、一切の汚れがなく、テーブルに置いてあったのだ。誰かに取ってほしそうに。  そうだとしたら、俺はまんまと乗せられたヤツになる。辺りを見回てみるも、俺を観察している怪しい人影は見当たらない。  360度見渡せる死角の少ない公園で隠れられそうな場所といえば、ドーム状の滑り台や大きな木の陰、駐輪場、周辺の家やマンション。いくら周囲に警戒を散らしても、それらしい人は見つからなかった。  悪戯だとしても地味過ぎる。ここで長い髪で顔を隠した女がスッと現れるくらいしそうなものだが、変わり種が起こる気配もない。  誰かの忘れ物か。俺は使いどころが分からないそれをじっと見つめながら、しばしの休息を過ごしたのだった。
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!