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悪戯
午後の講義が終了した。サークルに行く友達と別れ、穏やかな夕時に向かう。春から夏に向かおうとしている季節で、少しずつ薄手の装いが目立ってきている。
校門から校舎にかけて真っすぐ続く本通りは、おしゃれな景観と広々とした道とあって、流行に敏感な学生が多く感じる。思ったキャンパスライフとは違ったが、俺もその一員に加わっているというだけで鼻が高くなっていた。
俺は歩きながらスマホを取りだす。メッセンジャーアプリが通知を知らせていた。開いて確認していく。返信をするのは後でもいい。今日はバイトもなく、ゆっくりできる。ならばと、俺は期待していた相手からのメッセージに返信した。
俺の歩く先には当然校門があるわけだが、その手前には、緑ヶ渕大学の立地の悪さを配慮して、学生達を駅まで送るバスのためのロータリーがある。俺もバスに乗った方が早いので、バス停に向かうのがいつもの大学からの帰りの道となる。
俺はスマホのカメラを起動させ、インカメラに切り替えた。レッドオレンジの髪を軽く整える。身だしなみがばっちりとなってスマホをしまうと、少し気負いながら自信を授かった足で進んでいく。
バス停前では多くの学生が雑然とバスを待っていた。その中からまとまった黒髪の女性に目をつけて歩いていく。
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