第1話

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 学生の頃の話とか、恋の話、バイト中に起きたことなど話して、みんなでワイワイご飯を食べてお酒を飲む。  俺と瀧が隣り合わせに座って、その向かいに西井と皆川さんが座っていたが、途中で皆川さんが俺の隣に座ってきた。  隣では西井と瀧が何か話している。 「佐久間さんは……」 「ん?」  近くで皆川さんを見て気がついた。目がとろんとしていて顔が赤い。結構酔っているんじゃないか。 「彼女とかいるんですか……?」  甘えたようなその声にどきりとして、慌てて皆川さんから視線をそらした。酔ったら甘えたくなる人なのだろうか。 「いないいない!」  なんだか恥ずかしいので、はは、と笑ってその場の空気を誤魔化した。そしたら皆川さんの小さな手が、俺の太ももにそっと触れる。 「ここ出たら、二人に内緒で私の家に来ませんか?」 「えっ」  皆川さんはそのあと小さな声で「だめ?」と上目遣いで俺に聞く。そんな風に見たことはなかったが、その皆川さんの表情がとても色っぽくて、顔に熱が集まっていく。  家に呼ばれるってそういうこと?  すすす、と皆川さんの手が太ももから上へ上がってくる。慌てて立ち上がって、トイレ! と言って逃げるようにトイレへ向かった。  あんな風に女の子に迫られるのは初めてで、すごく戸惑ってしまった。まだ心臓がドクドクいっている。  この前の瀧の言葉がちらついて、そんな自分も嫌になる。ビッチとか、そんな風に思いたくないのに。  そうじゃなかったら皆川さんは、俺のことが好きってこと? まさかあの人気の皆川さんが、瀧がいるのにわざわざ俺を選ぶなんてことないよな……  色々考えたけど気持ちを落ち着かせて、トイレから席へ戻ると皆川さんは自分の席に戻った。  あっという間に時間は過ぎ、西井と瀧の終電があるので、もう帰ることに。  西井は前から酒に弱いしベロベロだけれど、瀧は大丈夫そうなので安心だ。帰る方向が一緒だと言っていたし。 「ありがとう! またね! サクちゃんは明日かな!」 「そうだな、気つけて!」 「お疲れ様です」  瀧と西井に手を振って、皆川さんと二人で歩いた。瀧のやつ、西井に手を出したりしないよな……心配になって後ろを振り返ったら、西井と目が合った。  西井はにこっと笑うと俺に手を振り、前を向く。何か言いたげにしていた風に見えたけれど、何かあったのだろうか。 「佐久間さん」 「あ、ん?」  暗い夜道で皆川さんが俺の名前を囁くから、その雰囲気のせいでさっきのことを思い出した。そう言えば二人に内緒で家に来て欲しいと言われていたのだった。 「え、えーっと、家だっけ? 何か用事でもある?」  よくよく考えたら、俺のことが好きだから家に呼んでいるのかも、と考えるのは少し自意識過剰だ。  友達として、何か用があるから呼ばれているのかもしれないという考えにどうして至らなかったのだろう。 「……いいから、私の家すぐそこなんです」 「お家の人に迷惑とかならない?」 「大丈夫です。一人暮らしなんで」  ふつうに皆川さんがそう言うから、目玉が飛び出るほど驚いた。一人暮らしならなおさら上がりにくい。だってもう0時を回ってしまう。 「………」  高校卒業して、正直まだ心は高校生みたいなものだ。時間だけが過ぎて中身は全く成長していない。年齢だけ食っていく。  気づけば21歳だ。俺くらいの年齢になると、ワンナイトラブ……みたいなのも、やっぱりあるのかな……。  なんて考えている自分が恥ずかしい。瀧じゃないんだから。  俺はセフレとか、はしたないのは好きじゃないんだ。
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