第1話

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 毎日同じことをなんとなく繰り返していると、月日が経つのがとても早く感じる。瀧が入ってきて、もう一ヶ月が経とうとしていた。  瀧はドリンクだけじゃなく、フードを作るのも完璧にこなすようになっていた。あり得ない成長速度だ。 「瀧くーん」  平日の夕方のこと。デシャップカウンターから、女の子がキッチンへ顔を覗かせて笑顔で瀧に手を振る。  デシャップカウンターとは、出来上がったドリンク・フードなどを置いたり、ホールスタッフが下げたお皿などを置くカウンター。  デシャップと呼ばれる役割のホールスタッフが伝票を整理して料理を受け取る場所でもあり、伝票をキッチンに伝えてくれる場所でもある。  来ちゃったと笑って言う女の子は、とてつもない美人だった。  彼女か誰かかななんて思って、そんな美人さんにぺこりと頭を下げる。  恋バナとかしないから知らなかったけど、こんなイケメンを誰かが放っておく訳がないよな。 「もうすぐ上がりだから、待っててね」 「もちろん!」  またまたイケメンな笑顔を浮かべてそう優しく言う瀧を見て、パンケーキを作る手が思わず止まってしまった。あんな顔で笑われたら、女の子はイチコロだろう。  席へ戻っていくその女の子を見て、瀧にすかさず「彼女?」と茶化すように聞いてみる。  だが、瀧の口から出た言葉はあまりにも意外な言葉だった。 「セフレですよ」 「へー……え!? うわ!!」  パンケーキの上に描いていた生クリームが驚きで崩れてしまった。  慌ててなんとか修正したが……今セフレって。 「まじ?」 「……はは、そんなに驚きます?」  瀧は笑っているけど、予想外過ぎた。とてもセフレがいたりするような人には見えないから。 「あー、すみません、佐久間さんは童貞でしたね」 「は!?」  からかって笑うようにそう言われて、思わず顔に熱が集まった。デシャップを見るとホールスタッフもいないようだったのでまずは一安心だが、どうしてそのことを…… 「な、何言ってんだよ!」 「はは」 「は、はは……大体そんなこと何でわかるんだよ」  慌てて否定をしたが、顔が熱いしドキドキと胸が鳴っている。瀧にそれが伝わってしまわないように平然を装って、背を向けた。  そしたら俺のすぐ背後に瀧の気配がフッとして、耳元で言われた言葉に体が硬直。 「雰囲気?」  くす、と静かに笑う瀧の鼻息が、耳元にあたる。振り返ったら見下したように笑われて、顔がどんどん熱くなっていった。 「先輩からかうんじゃねーよ!!」  それからだ、瀧が俺に本性を見せるようになったのは。
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