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「おはようございます、佐久間さん」
「……」
一週間後、また瀧と開店時間から入っていた。
俺にあんなことを言ってきておいて、普通に笑いかけてくる瀧の神経が理解できない。
「おはようございます! 今日デシャップなんでよろしくです」
「あ、おはよう! よろしく!」
デシャップからホールスタッフの皆川さんが顔を覗かせ、笑顔でそう言ってきた。
皆川さんは瀧の少し前に入ってきた女の子で、本当に可愛い。
雰囲気もふわふわしているし、何より一生懸命なところが男性陣から人気がある。
「さっそくオーダーお願いします! ウインナーコーヒー1、アイスココア1です」
皆川さんの声かけに、瀧と一緒に返事をして同時に動いた。グラスを取ろうと上の棚に手を伸ばすと、瀧の手も伸びてくる。
「……俺がやるからいーよ、瀧は洗い場入ってて」
「俺洗い場嫌いなんです」
こいつ……
洗い場なんて誰だって嫌いだろ。先輩に押し付けようとするなんていい度胸だ。
しかし、瀧と軽く睨み合っていたら、デシャップの皆川さんにキョトンとした顔で見られたので、仕方なく俺が洗い場に入ることに。
何だよ瀧のやつ。前まですげーいい子だと思ってたのに、この前から俺をからかったり……
「……」
耳元で囁かれたことを思い出して、顔がまた熱くなった。
瀧からドリンクを受け取る皆川さんも、瀧を見てほんのりと頬を赤く染めている。
そんなにいいやつじゃないのに……なんて思っている自分も、僻んでいるようでとてもカッコ悪い。
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