第1話

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「おはようございます、佐久間さん」 「……」  一週間後、また瀧と開店時間から入っていた。  俺にあんなことを言ってきておいて、普通に笑いかけてくる瀧の神経が理解できない。   「おはようございます! 今日デシャップなんでよろしくです」 「あ、おはよう! よろしく!」  デシャップからホールスタッフの皆川さんが顔を覗かせ、笑顔でそう言ってきた。  皆川さんは瀧の少し前に入ってきた女の子で、本当に可愛い。  雰囲気もふわふわしているし、何より一生懸命なところが男性陣から人気がある。 「さっそくオーダーお願いします! ウインナーコーヒー1、アイスココア1です」  皆川さんの声かけに、瀧と一緒に返事をして同時に動いた。グラスを取ろうと上の棚に手を伸ばすと、瀧の手も伸びてくる。 「……俺がやるからいーよ、瀧は洗い場入ってて」 「俺洗い場嫌いなんです」  こいつ……  洗い場なんて誰だって嫌いだろ。先輩に押し付けようとするなんていい度胸だ。  しかし、瀧と軽く睨み合っていたら、デシャップの皆川さんにキョトンとした顔で見られたので、仕方なく俺が洗い場に入ることに。  何だよ瀧のやつ。前まですげーいい子だと思ってたのに、この前から俺をからかったり…… 「……」  耳元で囁かれたことを思い出して、顔がまた熱くなった。  瀧からドリンクを受け取る皆川さんも、瀧を見てほんのりと頬を赤く染めている。  そんなにいいやつじゃないのに……なんて思っている自分も、僻んでいるようでとてもカッコ悪い。
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