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そして、ある日の夜。
「今日みんなで一緒にご飯行きませんか?」
みんなで店を出たら、一緒にラストまで入っていた皆川さんにそう言われた。
みんなでって瀧もいる。瀧もだろうか……そりゃそうか。
「俺は……」
瀧とご飯とかすごく嫌だ。猫を被っているところを見ないといけないと思ったら、腹が立って仕方なくなる。
「サクちゃん行くなら私も行こっかな〜、えへへ」
そう言ってズイッと迫ってきたのは、ホールスタッフの西井。俺と同時期に入った女の子で、俺と同い年。
大学に通いながらアルバイトとしてここで働いている子だ。
「えー……」
「えーってなに!?」
俺が行くなら行くなんて言われると断りにくすぎる。
「瀧さんも一緒に行きましょうよ!」
「みんなで!」
可愛い女子二人にズイズイ迫られてそう言われて、首を縦に振ることしかできなかった。
ちらりと瀧を見てみると瀧は乗り気のように笑っていて、俺に生意気な口を聞くような人には見えない。
「今日も疲れたね!」
「ねー! わりと混んだね」
……楽しそうに俺の隣で話す女子二人を横目に、こういうのも悪くないかと思った。俺も何も気にせずに楽しんだ方がいいか。
「佐久間さんは、ふつうに女絡みあるのに彼女いないんですね」
ボソッと瀧にそう言われて、何も言わずに瀧を睨む。童貞だとか、西井や皆川さんの前で言ったら今度こそぶん殴ってやる。
「意外。女の子とかすごい苦手そうなのに結構話すし」
「お前さ……俺のことなんだと思ってんの?」
こう見えて学生の頃は女子に告白されたりということがあった。なのに彼女ができたことがないのは、俺が恋というものをしたことがないから。
瀧のようにセフレを作ったりと、人の心を弄ぶような遊び人は大嫌いだ。
「西井さん、佐久間さんのこと好きなんですね」
「は?」
「俺のこと見る目と佐久間さん見る目が違うし」
「いや、それってお前のことが……」
「あと、処女だな」
西井と皆川さんに聞こえないくらいの声の小ささだけれど、瀧の肩を思いっきり叩いた。
だからどうしてそういうことを言うのか、こいつは。
ビッチとか処女とか、そんなの出会って間もないこいつにわかるわけがない。
「サクちゃんは何食べたい!?」
瀧を睨みつけていたら、西井がズイッと寄ってきてどきりとした。瀧の言葉を鵜呑みにする気は全然ない。
しかし、俺のこと好きなのかなという考えが頭を過って、視線をそらす。
「あー、うん、何でも」
「何でもが一番困るよ〜。瀧さんは何食べたいですか?」
「結構お腹空いてるんで、がっつりがいいですね」
「私もー!!」
にこっと笑う瀧の姿は、さっき俺と話していた時の瀧の雰囲気とは全然違う。カッコイイから余計に腹が立つ。
結局は女子二人が主に意見を出し合って、カフェの近くの居酒屋に食べに行くことになった。皆川さんと居酒屋に行ったなんて主任に知れたら、とても妬まれそうだ。
お店に入って、女子二人が張り切って色々と注文をしてくれる。俺は明日も仕事があるので、お酒は控えていた。
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