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 いつの間にか、私の背を抜いた。  いつも後ろにいた癖に、私について回らなくなった。  勉強だって運動だって、敵わない。  守ってやらなきゃって、思ってただけだったのに。  私は、本当は、そんなあんたがーー。  季節は春の終わり。  夏の始まりに恵の新しい恋が始まった。 「それでさぁ瀬川先輩って超かっこいいの。え? 知らないの? バスケ部の人だよ。三年の。もうすぐ引退試合なんだってー。え? あんたとなんか一緒に行くわけないじゃん。イクミと行く予定だよ。え? いやいや、話したことなんかないよ、無理だよ。てか先輩彼女いるし。知ってる? 二年の森山咲さん。あ、そっちは知ってんのかい。彼女、かわいーもんなぁ。あー、うらやまっ」  恵はそこまで一息で言うと、コップに入った麦茶をがぶ飲みした。些か色素の薄いセミロングの髪をかきあげる。控えめな奥二重の瞳で、問いかける。 「で? あんたの相談ってなんだっけ?」  恵の言葉に、目の前にいた青年は苦笑する。ここは、彼の部屋だった。 「ひどいなぁ、けいちゃん。そもそも、今日は僕の相談で来てもらったのに」 「そうだったわね。ほら、話したら? はるき」 「僕もさ、好きな人が出来たんだ」  恵はぽかんと口を開けた。 「だから、好きな人が、出来たんだ」  
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