ep.5 黄色い薔薇のおにいちゃん~太陽のような笑顔の裏側~

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マンションから出てしばらくは、南央斗は無言で郁の手を引いて歩いていた。 郁の先を歩く南央斗の表情は見えなくて、怒っているのかそうでないのかわからない。 けれど、郁の手を握る力の強さから、南央斗の感情が波立っていることだけは感じ取れた。 「‥‥あの、南央斗さん‥‥!」 「‥‥あ、‥‥手、ごめんね。痛かったよね」 何か言わなければいけない気がして、大きめの声で呼びかけると、南央斗はハッと我に返ったように振り向いて、郁の手を離した。 そして、どこか悲しそうな笑顔を浮かべながら、郁と向き合う。 「‥‥さっきはごめんね。姉ちゃん、ちょっと過保護気味でさ」 「いえ‥‥それは全然、大丈夫なんですけど‥‥」 ふるふると首を横に振っていると、南央斗はじっと郁を見つめたまま、静かに口を開いた。 「‥‥郁ちゃん、俺に何か聞きたいことがあるんじゃない?」 「え‥‥」 「実は今日、津川が郁ちゃんに何か言ってんの、見ちゃったんだよね。あいつのことだから、南央斗には気を付けろとか、あいつはヤバいとか、そんな感じのこと言ったんじゃない?」 きっと、郁を探しに来てくれた時、津川と話しているのを見てしまったのだろう。 津川に言われたことも、まさに南央斗の言う通りで、郁はどう返していいかわからずに、俯いてしまった。
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