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そんなことを思いながら、もらった資料にもう一度目を通していると、床に何か、小さなケースのようなものが落ちているのに気が付いた。
黒い革で出来たそれを拾い上げてみると、中身は津川の名刺だった。
肩にかけたバッグに色々な仕事道具を入れていたから、出し入れの際に落としたのかもしれない。
「‥‥ん?郁さん、何か落とし物ですか?」
「はい。‥‥まだそのあたりにいらっしゃるでしょうし、ちょっと届けてきます!」
そう言って、急いで店を出る。
近隣の駐車場に車を停めていると言っていたから、そこまでは歩いて移動しているはず。
繁華街の方角に向かって少し走ってみると、三人の背中はすぐに見つかった。
「あっ、あの、これ――――」
郁は三人を追いかけて、声が届きそうな位置まで来たところで、そう声をかけようとした。
けれどその瞬間、三人の会話が耳に届いてきたので、思わず言葉をとめる。
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