336人が本棚に入れています
本棚に追加
「いらっしゃい。お呼び立てしてごめんなさいね、南央斗がいつもお世話になってます」
小綺麗なマンションの一室で、郁たちを出迎えてくれた南央斗の姉は、沙苗といった。
30代とは思えないほどに若々しく、南央斗に似て目鼻立ちの整った美人だ。
まだ二歳だという娘の凛を抱いて、笑顔で郁に頭を下げてくれるので、郁も慌てて挨拶を返した。
「南央斗、職場で迷惑かけてない?この子、お調子者だし、うるさいでしょ」
からかうようにそう言う沙苗に、南央斗は「もー、姉ちゃん、余計な事言わなくていいから!」と笑っている。
その様子を見ているだけでも、仲の良い姉弟であることが伝わってくる。
「子供服ってすぐサイズ合わなくなるし、処分にも困るのよね。必要な人に譲れるなら私も嬉しいわ」
そう言いながら、沙苗は郁を子供部屋に通してくれた。
「こっちはハロウィン用の衣装ね。ここらへんは学校に着て行けるんじゃないかしら」と、クローゼットから何着も子供服を出してくれる。
どれも状態も綺麗で、美玖が喜びそうな可愛らしいデザインだ。
「ありがとうございます‥‥!」とお礼を言いながら、沙苗から手渡される子供服を眺めていると、そばでじっと座っていた凛が、南央斗のほうによちよちと近寄り始めた。
「‥‥ん?凛、どうしたー?」
「なおくんと、あそぶ‥‥」
「遊びたい?じゃあ向こうでちょっと遊ぶか!‥‥ごめん郁ちゃん、俺ちょっと向こう行ってるね」
「はい!」
南央斗に抱っこされて嬉しそうな凛を見送りつつ、頂いた子供服をたたんで、紙袋に入れていく。
しばらく、沙苗と世間話をしながらそんな作業を続けていると、急に沙苗が、深刻そうな声音で郁に尋ねてきた。
最初のコメントを投稿しよう!