ep.5 黄色い薔薇のおにいちゃん~太陽のような笑顔の裏側~

25/51
前へ
/445ページ
次へ
ヒステリックにすら感じられる様子の沙苗に、「ねぇ、お願い!」と肩を揺さぶられたその時、子供部屋の入り口から、静かな声がした。 「‥‥だから、姉ちゃん。余計な事言わなくていいって」 驚いて声の方を見ると、南央斗が凛を抱っこしたまま、苦笑気味に立っていた。 「な、南央斗‥‥」 「凜がお腹空いたってさ。‥‥服、詰め終わった?」 「あっ、はい‥‥」 「じゃ、あんまり長居するのも何だし、行こっか。‥‥ほら、姉ちゃん、離してあげて」 そう言って、南央斗はつかつかと郁に歩み寄ると、沙苗から引き離した。 そして、そのまま郁の手を引いて、足早に玄関へと向かう。 「ねぇ、待って、南央斗!」という沙苗の声が聞こえたが、南央斗はそれには振り返らず、郁の手を引っ張ったまま、マンションを後にした。
/445ページ

最初のコメントを投稿しよう!

336人が本棚に入れています
本棚に追加