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ヒステリックにすら感じられる様子の沙苗に、「ねぇ、お願い!」と肩を揺さぶられたその時、子供部屋の入り口から、静かな声がした。
「‥‥だから、姉ちゃん。余計な事言わなくていいって」
驚いて声の方を見ると、南央斗が凛を抱っこしたまま、苦笑気味に立っていた。
「な、南央斗‥‥」
「凜がお腹空いたってさ。‥‥服、詰め終わった?」
「あっ、はい‥‥」
「じゃ、あんまり長居するのも何だし、行こっか。‥‥ほら、姉ちゃん、離してあげて」
そう言って、南央斗はつかつかと郁に歩み寄ると、沙苗から引き離した。
そして、そのまま郁の手を引いて、足早に玄関へと向かう。
「ねぇ、待って、南央斗!」という沙苗の声が聞こえたが、南央斗はそれには振り返らず、郁の手を引っ張ったまま、マンションを後にした。
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