ep.5 黄色い薔薇のおにいちゃん~太陽のような笑顔の裏側~

30/51
前へ
/445ページ
次へ
「テレビ朝顔は、一番行きたかった局だったんだ。スポーツに力入れてるし、憧れてるスポーツキャスターもテレビ朝顔だったし。だからすげえ嬉しくて、絶対受かってやる!って意気込んでたなー」 そう言って、南央斗は当時の自分を思い出すように笑った。 郁も、面接を前に、気合を入れる南央斗が目に浮かぶようだと思った。 「‥‥まぁでも、結局最終面接は受けられなかったんだ。面接の日、俺は警察にいたから」 「‥‥それは、何でですか‥‥?」 「うーん‥‥‥‥簡単に言えば、はめられた、ってことになるのかな」 南央斗の話では、こういうことだった。 面接を数日後に控えたある日のこと。所属していた大学のバスケサークルの友人から電話がかかってきて、南央斗は家の最寄り駅に呼び出された。 かなり焦った様子だったので、どうしたのかと問えば、「母親が倒れたので、今から飛行機で実家に帰ってくる」という。 ただ、同じサークルの別の友人に、課題レポートのための大切な資料を預かっていて、それを今日中に返さなければならない。 悪いが、これをその友人に渡してくれないか。 渡された茶封筒は、見たところA4の論文コピーが何部か入っているようで、特に不審な点はなかった。 南央斗は疑いもせず、「わかった、気をつけてな」と、その友人を送り出した。
/445ページ

最初のコメントを投稿しよう!

336人が本棚に入れています
本棚に追加