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「テレビ朝顔は、一番行きたかった局だったんだ。スポーツに力入れてるし、憧れてるスポーツキャスターもテレビ朝顔だったし。だからすげえ嬉しくて、絶対受かってやる!って意気込んでたなー」
そう言って、南央斗は当時の自分を思い出すように笑った。
郁も、面接を前に、気合を入れる南央斗が目に浮かぶようだと思った。
「‥‥まぁでも、結局最終面接は受けられなかったんだ。面接の日、俺は警察にいたから」
「‥‥それは、何でですか‥‥?」
「うーん‥‥‥‥簡単に言えば、はめられた、ってことになるのかな」
南央斗の話では、こういうことだった。
面接を数日後に控えたある日のこと。所属していた大学のバスケサークルの友人から電話がかかってきて、南央斗は家の最寄り駅に呼び出された。
かなり焦った様子だったので、どうしたのかと問えば、「母親が倒れたので、今から飛行機で実家に帰ってくる」という。
ただ、同じサークルの別の友人に、課題レポートのための大切な資料を預かっていて、それを今日中に返さなければならない。
悪いが、これをその友人に渡してくれないか。
渡された茶封筒は、見たところA4の論文コピーが何部か入っているようで、特に不審な点はなかった。
南央斗は疑いもせず、「わかった、気をつけてな」と、その友人を送り出した。
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