番外編「Hear My Voice」act.07

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番外編「Hear My Voice」act.07

 羽柴が酒の匂いをぷんぷんさせているショーンを抱え上げて部屋に帰った後でも、腕の中のショーンはバタバタと暴れて、尚かつ時折羽柴の首もとに囓り付いていた。 「イテ!」  思わず羽柴は悲鳴を上げる。  ── 酒を飲ませると噛みつき癖があるなんて、ビックリだ………。  噛み癖とは言っても、甘噛みの少し強いくらいの力だから血が滲む程ではないが、敏感なところに噛みつかれると、やはり身体が驚いてしまう。  羽柴は思わず、ショーンをリビングのソファーに投げ出す。  水を取りに行こうとキッチンに向かおうとする羽柴の足にショーンが縋り付き、ガッチリ腕を回して放さない。 「おい…ショーン………。お水。水を取りに行くだけだよ。飲みたいだろ? お水」  ショーンは羽柴の足下で、フルフルと頭を横に振る。 「いらない。飲むんなら、コウのを飲みたい………」 「は?」  羽柴はショーンを見下ろす。熱っぽい目つきで下から見つめられ、ショーンが何をさしているのかわかった。  羽柴は右手を額に当て、天を仰ぐ。  大人げなく顔を赤らめてしまった。  ── 酔っているとはいえ、俺の精液を飲みたい、だなんて。 「何言ってんだ。そんなに酔ってちゃ、勃つものも勃たないよ。イクこともできないぞ。今日は無理だって」  羽柴がそう言っても、ショーンは羽柴の足を掴んだまま、首を横に振っている。  羽柴は溜息をついた。  羽柴も経験があって言っていることだが、酒を飲み過ぎると性欲は高まっても感覚が鈍くなる。完全に勃起できないし、万一できたとしても射精まで至らない。せいぜい、途中で眠たくなってイビキをかき出すのがオチだ。 「う~ん………取り敢えず、水、だな」  羽柴はそう呟いて、キッチンに向かって足を進めた。ショーンを引きずりながら。  ショーンはなかなかしぶとくて、しばらく羽柴の足にしがみついてたが、キッチンの入口でついに力つき、羽柴の足を逃した格好のまま、床に俯せた状態で残る。まるでトラの毛皮の敷物のように。  羽柴がミネラルウォーターをグラスに注いでショーンの元に戻ってくると、俯いたままのショーンは少しベソをかいていた。 「………コウが、俺を置いて行ったぁ………」  大抵の人間は、アルコールを過度に摂取すると子ども返りするものだが、ショーンも例外ではないらしい。彼が今日飲んだアルコールの量は、テキーラ4杯では済んでいないかもしれない。 「置いて行ってないでしょ。ほら、飲んで」  ショーンの身体を起こして、彼の前の前にグラスを差し出す。 「これ………お酒?」  小首を傾げて、ショーンが上目使いで羽柴を見上げてくる。  ── あ~……、その目。やめろ。  思わず羽柴は顔を顰めた。  羽柴は、ショーンの上目使いが苦手だった。正確に言うと苦手というよりは………『弱い』といったところか。  その瞳を見るだけで、おねだりされてる気分になる。おそらく、ショーンはそんなこと思ってもいないだろうが。 「お酒じゃないよ。ただの水。君が正気に戻るための、魔法の液体」  “魔法の液体”という表現に引っかかったのか、ショーンがニコ~と笑みを浮かべる。 「飲ませて?」  ショーンはそう言って、「ん」と唇を差し出す。  タラリと羽柴の額に冷や汗が垂れた。  ── これは、ひょっとして口移しを要求してるのか?  そう思いながらも、グラスをショーンの唇に押し当てると、案の定怒られた。 「そうじゃない!!」  ── うわ。本気で怒ってる。  羽柴は思わず目をまん丸にした。  こうなったら、二人の間で年齢差など吹き飛んでしまう。 「全く、しょうがないなぁ………」  酒癖わるぅ~と羽柴は思いながら羽柴は口に水を含むと、ショーンの唇を塞いだ。  コクコクとショーンの喉が鳴る。 「………はぁ………水だ………」  なんて、マヌケな感想を漏らしている。 「水だよ。さ、もっと飲んで」  羽柴がショーンにグラスを渡すと、ショーンは素直にグラスを受け取って、水を口に含む。  よしよしと羽柴が思った矢先、ショーンが羽柴の後頭部を押さえて、口を塞いできた。 「ん~~~~っ」  羽柴の口に水が流れ込んでくる。ついでに、ショーンの舌も。 「ぷはっ! 俺に水を飲ませてどうする?!」  羽柴が叫ぶと、ショーンはキャッキャと笑いながら、再びゴロリとその場に寝ころんだ。 「冷たくて、気持ちいい………」  上半身裸の素肌に、ひんやりとした床が気持ちいいんだろう。とろんとした顔つきのまま、天井を見上げている。 「気分は悪くないか? 吐きたくなったら、言えよ」  羽柴がそう言っても、余り聞こえてないように思える。  ── ま、そこまで悪酔いはしてないようだな。  羽柴がよっと腰を上げると、再び足を掴まれた。 「………おいて行かないで………」  すぐさまショーンの目から涙が零れる。  アルコールのせいで、感情はかなり高ぶっているようだ。  羽柴は苦笑を浮かべると、ショーンを横抱きにして、ソファーに取って返した。  羽柴の腕に包まれたショーンは、本当に幸せそうに微笑む。  ソファーに座ると、ショーンがまた唇を求めてきた。  今度は羽柴も大人しく与えてやる。  ショーンからの積極的なキスを受け、羽柴もショーンの首筋を優しく撫でてやる。  いつもはぴくりと身体が反応するが、やはり鈍くなっているのかそういうのはない。 「 ── 俺……嫉妬しちゃったんだ………」 「え?」  キスの後そんなことを言うショーンに、羽柴は顔を顰める。 「だってコウ、女の人とソファーで話し込んじゃってんだもん。俺の方ちっとも見ないでさ………。だから俺………」  ── なるほど、テキーラをガブ飲みしたのは、そのせいか。  ようやく羽柴は合点がいく。  こうして『こまりんぼう』になっているのも、嫉妬心からくる暴挙ということか。  ショーンがしたことは呆れ返ってしまうような行動だが、やはり「ヤキモチを焼きました」と言われると、愛おしく感じる。  思わず羽柴は、微笑ましいぞ~という視線でショーンを見つめたが、次の瞬間にはギョッとした。  ショーンは羽柴の目の前でジーンズのジッパーを下げ、下着ごと少しずらすと、自分のペニスを引き出し、扱き始めた。 「ショーン………。な、何やって………る?」  思わず羽柴は訊いてしまう。 「………挑発………」  回らない舌で、ショーンは答える。 「だって………俺、頑張んないと………コウに………フラれちゃう………。ね………俺って、セクシー………?」  ショーンの性器は、アルコールのせいもあってか、勃起する気配はまだなかったが、それでも涙に潤んだ彼の茜色の瞳は堪らなくセクシーだった。  羽柴は、ショーン自身を扱く手を押さえ、目頭にキスを落とした。 「ショーンは十分にセクシーだよ。何今更そんなわかり切ったこと訊いてくるんだ。君は、俺にとって、最高に可愛くてセクシーな恋人だ」 「………ホント?」 「ああ。── だから、無理しなくていい。誰に対抗する必要ない。ほら見ろ、濡れてもないのに無理に擦るから、赤くなってるじゃないか」  ショーンの手をどけさせると、確かに彼のペニスは少し赤くなっている。元々そこの皮膚は敏感だから、本来ならデリケートに扱ってやらないといけない。  羽柴が、そっと優しく握ると、握っているだけで少し硬くなってきた。  どうやら勃起はできるようだ。けれど、おそらく射精はできないだろう。これほど酔っていれば。 「………コウ………」  ショーンが甘えるように、羽柴のこめかみにキスをしてくる。そして「はぁ………あ………」と熱い息を吐き出した。  羽柴は、ショーンの熱い吐息を耳で受けながら、心の中ではムムムと唸る。  ── さて、ショーンをその気にさせてしまったが、どうするか………。  ショーンは羽柴の耳元で「今日こそコウの挿れて………」と囁いているが、明日記憶が残っているかどうかもわからないこの状態で、ショーンと初めて結ばれるようなことはしたくなかった。もちろん、ショーンの可愛いおねだりのお陰で羽柴のそこも臨戦態勢を整えつつあるのだが。  ── 確かにアルコールで麻痺してるから、挿入する時の痛みは少ないと思うが………。  でもこれで明日、ショーン自身が記憶をなくしていたら、彼自身相当ショックで落ち込んでしまうだろう。目覚めると、身体にはその痕跡が残っている訳だから。  羽柴は軽く溜息を吐くと、ショーンの顔に小さなキスの雨を降らせながら、言った。 「まだバイブも挿れられてないだろ………? ここにバイブが挿るまではダメだって約束したじゃないか」  羽柴が、ショーンのアナルの入口をトントンとノックすると、そこは感じるのかピクッとショーンの身体が跳ねた。  ショーンが首に抱きついてくる。 「じゃ………挿れて………バイブ………。今日は、バイブまで、して………」  ── う~ん、そう来たか。  あんなにバイブを見ると拒否反応をしてしていたショーンなのに。  酒の力なのか、羽柴への愛の力なのか。 「イケなくてもしらないぞ………」  こんな状態のショーンをよくしてあげられるか、はっきり言って羽柴には自信がなかったが、ショーンはすっかりその気だ。 「待っていられる? 取ってくるけど………」  またおいてかれたと言って泣かれてはマズイと羽柴が訊くと、ショーンは大人しく頷いた。  羽柴は、ロフトに上がってバスタオル二枚とローション、バイブを手に持つと、リビングに引き返した。  リビングのソファーでは、脱ぎかけのジーンズを足にひっかけたままのショーンが、ピタリと膝小僧を閉じて、体操座りで座っている。一応、羞恥心は僅かに残っているのか。  羽柴は、ソファーの前に跪くと、「これ、脱いじゃおうか」とジーンズに手をかけた。  ショーンが腰を浮かせる。 「待ってくれ………、そのまま………」  ジーンズを引き抜いた後、ショーンの腰の下にバスタオルを引いた。  シーツなら洗えば済むが、ソファーはそうもいかない。  すっかり素っ裸になったショーンは、身体を丸めてブルブルと少し身を震わせた。 「寒い?」  羽柴が訊ねると、ショーンは首を横に振る。武者震いだろうか。 「脚………開いて」  ソファーの上に体育座りしているショーンが、少しだけ膝小僧を開く。 「それじゃダメだよ。何もできない」  羽柴がそう言うと、ショーンは酒で赤くなった顔を更に真っ赤にして、俯いた。  ソロソロと脚が両側に開いていく。  ショーンのソコは、半勃起の状態でピクリと震えている。  どうやら今夜はこれが限界か。 「痛いって思ったり、気持ちよくないと思ったり、もう嫌だと感じたらはっきり言うんだよ」  羽柴がショーンの俯いた顔を覗き込みながら言うと、ショーンはハァと息を吐き出して頷いた。その顔は、完璧に欲情した顔つきだ。アルコールのせいで、脳と身体の反応が分離している。  羽柴は自分の指にローションを垂らすと、ショーンのアヌスに触れた。 「あ………」  ショーンがか細い声を上げる。  羽柴は、再度ショーンの股間に向かってローションを直接垂らす。 「………んっ………う・ふ………」  ローションの冷たさにショーンの身体がブルッと震える。  ローションまみれになったペニスをゆっくりと扱いてやりながら、アヌスの口をマッサージした。  ショーンが目を閉じる。そしてクッと唇を噛みしめた。  しばらくして、アヌスが緩んでくるのを見計らって、羽柴は中指を入れた。 「………あぁっ………あ………」  バスタオルの端を掴むショーンの両手に力がこもる。  羽柴の左手が握るショーンのペニスはそれ以上硬くなる兆しは見せなかったが、荒く息を吐き出すショーンの顔つきを見ていると、一応感じているようだ。  右手の余った親指で、陰嚢の中央の筋をクリクリと押してやる。 「………うっ・ン………は………ぁ………」  いつもより反応は鈍いが、腰がもじもじと揺れてくる。  羽柴は、二本目の指を入れ、前立腺をマッサージをしてやった。  これには酒が入っているとはいえ、敏感に反応する。 「うぁっ! あ・ん、あぁ、あっ!」  掠れ気味のセクシーな声がショーンの口から立て続けに零れる。  ── ドライ・オーガズムならイケるかもしれないな………。  羽柴はそう思い始めた。  アメリカに帰ってきて、最初にショーンを抱いた時にショーンがそういう状態になってから、羽柴はネットなどで男性の感じるドライ・オーガズムについてそれなりに研究していた。何事も知識不足は許せない質だ。  ドライ・オーガズムはどうやら日本語らしいが………まぁ、そんなことはどうでもいい。ようは、射精を伴わない絶頂で、女性の感じる「イク」という感覚に近い。男なんてものは、一度出してしまえば、次回復するまでが大変なんで気分も冷めがちになるのだが、ドライ・オーガズムは出すこともないので、何度でもイケるらしい。そして射精より何倍も深い快感を得られるそうだから、アルコールで鈍っていても、気持ちよくなれるかもしれない。  前回ショーンは、いきなり気持ちよくなり過ぎて、ちょっとばかり怯えて、泣き出してしまった。  ── どうせヤルなら、絶対に気持ちよくしてやらないと。  羽柴に取って、これは重要な男のプライドだ。  ショーンがさっき羽柴に「フラれないように頑張んなきゃ」と言っていたが、それは羽柴も同じである。ショーンに飽きられないように、頑張らなくては。  ── 我ながら、本当に辛抱してるよ………。  内心羽柴は苦笑いしながら………本当なら、今すぐにでも自分の猛ったモノでショーンを突きまくりたい………、羽柴はショーンにキスをした。ショーンは一生懸命応えてくる。  羽柴は、目尻にもキスを落として少ししょっぱい涙を舐めると、耳元で囁いた。 「………イッたと思ったら、ちゃんと言ってくれよ………。今日は言ってくれなくちゃ、ショーンが気持ちよくなってくれたか見た目ではわからないからね………」  ショーンがコクコクと頷く。  羽柴は、再度ローションを垂らして、ショーンのアヌスを指で責めた。 「ふぁっ………あっ………あ・ン………ふ………」  ショーンが羽柴の背中に腕を回してしがみつく。  くちゅくちゅと羽柴が嬲っているソコから、恥ずかしい音が漏れてくる。  羽柴はタイミングを見計らって、指を三本に増やした。  ショーンの身体がビクビクと震える。 「………あっ! ヤダッ………」 「ショーン?」  羽柴がショーンに優しく声をかけると、ショーンは目尻に新たな涙を浮かべながら、「い、今………イッちゃってる………かもッ………!! うっ、あぁ!!」と叫んだ。  羽柴の指がギュッと締め付けられる。  羽柴は、ショーンの股間を覗いた。  ペニスはビクビク震えていたが、やはり射精はしていない。 「はぁ………ぁ、あぁ………」  一度目の波は越えたようだが、快感の波紋がゆっくりと身体中に広がっているらしい。  射精した後には感じない快感の筈だ。  「気持ちよかった………?」  羽柴が訊くと、羽柴の胸元で「ん………」と頷く。 「よし………いい子だ………」  羽柴は思わず微笑みを浮かべて、思わず左手でショーンの頭を撫でる。髪にローションがついてしまって、羽柴はワタタと慌てた。  ローテーブルの上のテッシュボックスに手を伸ばす羽柴の腕を掴んで、ショーンが羽柴を引き寄せた。 「………コウ………もっと………」  ショーンはそう言いながら、更に片足を広げて、ソファーの手すりに脚を引っかける。  ローションで濡れ光っている股間が露わになり、とても扇情的な眺めだ。  羽柴は一瞬目眩を覚える。  これは、己の股間に悪い。  思わずスラックスに包まれた自分の股間を見下ろす。そこは言わずもがな、立派なテントを張っていて、ハァと羽柴は長い溜息をついた。ショーンも羽柴の視線につられて、そこに視線をやる。そしてパチパチと瞬きを繰り返した。  するとショーンは、何を思ったか、自分から身体を動かして羽柴の右手を自分の身体から引き抜くと、ソファーから降りて羽柴のベルトに手をかけた。 「おいおい! ショーン、お前何してる?!」  ローションでベタベタの手を持て余しつつ、羽柴が大声を上げる。  ショーンは熱に浮かされた表情のまま、スラックスと下着を膝まで下ろしてしまった。  そのまま彼は、身を屈めて羽柴のソコに唇を寄せる。 「ま! ちょ! タンマ!!」  思わず日本語で羽柴が叫ぶと、ショーンが目だけ上に上げて羽柴を見た。 「何する気だ?」 「何って………、フェラ」 「何?!」 「だから、フェラチオだってば。ブロウジョブ」  ショーンの口からいらやしいスラングが飛び出して、益々羽柴は目眩を覚える。 「何で? ヤなの?」  今日のショーンは、アルコールの手伝いもあってか、精神的にも強気だ。  羽柴は、大きく息を吐いた。 「何となく、気が進まないよ………」  ショーンが顔を顰める。 「フェラされるの、嫌い?」 「そういう訳じゃないが………」 「じゃ、何で? コウだってやってくれてるじゃん」 「俺がするのはいいんだよ」 「それって、どういう理屈?」  これじゃ、いつぞやセックスした時のデジャブのようだ。  確か以前は、ショーンが腰を振る振らないでそんなことを言っていた。羽柴はいいが、自分が振るのは何だか浅ましい気がすると。  羽柴はショーンの身体から離れてソファーに座った。  自分が上半身シャツとネクタイ姿で下半身が丸裸というマヌケな格好をしていることに気づき、両手のローションをバスタオルで拭った後、取り敢えず全て裸になる。  羽柴の隣に腰を下ろしたショーンが、シャツを脱ぐ羽柴の背中をうっとりした目で見つめる。  羽柴は背中にショーンのキスを受け、身体を反転させた。 「ねぇ・・・何で、嫌なの?」  ショーンが羽柴の股間に手を伸ばしながら呟く。  羽柴はショーンの髪を手で梳きながら、首を横に振った。 「何かさ………。君の口は神聖なもののように思えて」  ショーンが怪訝そうに羽柴を見る。 「どういう意味?」 「君の口は、君の大切な商売道具だろ。そういうと即物的だが………つまり、その………あんな素晴らしい歌声を出すショーンの口を自分のもので汚すような気がしてさ。いいのかなって思うんだよ」  羽柴がそう言い終わると、ショーンは明らかにムッとした顔つきをした。  ショーンは何を思ったか、ソファーの上に転がっている黒いバイブを荒っぽく掴むと、それをいきなり自分の口に銜えた。 「ショーン!!」  色気とは無縁の顔つきで、ショーンはバイブを口から出したり入れたりする。ジュブジュブと物凄い音を立てながら。 「お、おい! よせ、やめろ!!」  羽柴は、思わずショーンの手を掴む。  ショーンはバイブを口から出すと、ムッとした顔つきのまま、羽柴を見た。 「ねぇ、俺の口、汚れてる?」 「は?」 「俺の口、バイブ銜えて、汚れた? 見るに耐えない?」  ショーンはそう言って、口をアーンと開ける。  羽柴は、キョトキョトと瞬きをした。 「ねぇ、どうなの? キスもしたくない?」 「い、いや………そんなことはないけど………」  羽柴がそう答えると、ショーンは黒光りするバイブを羽柴の目の前に翳して、指さした。 「言っとくけど、俺にとってはコレよりコウのモノの方が、よっぽど大切で美しいものだから。だから、こんなことで汚れる訳がないよ」 「ショーン………」 「俺は一緒に気持ちよくなりたいの、コウ! 俺だけなんて、ヤなの!!」  ショーンはバイブをポイッと放り出し、羽柴の身体にしがみつく。 「もっと気持ちよくなりたいよ、コウ………。コウと一緒にさ………」  少し涙声になっているショーンの声を聞きながら、羽柴は唇を噛みしめた。優しくショーンの髪を撫でる。  思わず感動してしまって、羽柴も涙腺がジーンと熱くなる。 「………ねぇ………コウ………」  返事を焦れるショーンに、羽柴はふっと微笑んだ。  羽柴は、ショーンの濡れたアヌスをソロリと撫で上げる。  ビクリッとショーンの身体が跳ねた。 「じゃぁ、俺がショーンのココを可愛がってる間、舐められる?」 「うん………」  羽柴は、ゆっくりとソファーに横たわった。 「こっちにお尻向けて、俺の身体を跨いで………。狭いけど、大丈夫か?」 「うん」  ショーンは再び耳まで真っ赤にしながら………今更ながら、自分の股間を羽柴の頭上に晒す羽目になったことが恥ずかしいらしい………、羽柴の顔を跨いだ。  ショーンはソロソロと腕をついて、羽柴の勃起したペニスに唇を寄せる。 「無理して銜えなくていいからな。舐めるだけでも十分気持ちいいから」 「うっ、うん………」  ペロリと熱い舌の感触をペニスに感じて、羽柴は「………ん」と声を上げ、腰をピクリとさせた。  それに気をよくしたショーンは、積極的にペロペロと羽柴のペニスを舐める。  その動きは不器用だったが、それでも羽柴の快感は高まった。  何せ、ショーンにとっては初めての経験の筈だ。  羽柴も、ショーンの攻撃を再度始めることにする。  羽柴は、再び自分の指をローションで濡らして、アヌスに這わせた。  すっかり解れているソコは、すぐにでも羽柴の指を飲み込みそうな様子だったが、敢えて羽柴は、双尻の谷間を指でなぞり、偶に指先をアヌスに鎮めた。 「うっ………ふ………ん・ン………ん………」  ショーンが、羽柴のペニスの先を口に含みながら喘ぐ。  羽柴のペニスは大きくて、慣れないショーンはせいぜい亀頭までしかうまく銜えられない。  それでも腰が痺れるような感覚が羽柴を襲う。「ハァ………」と思わず熱い息を吐き出すと、それが性器に吹きかかって、ショーンが腰を揺らした。 「ハァ! あぁ………」  ショーンが息をつくために口を外した瞬間に、羽柴は二本の指をアヌスにねじ込む。 「あぁっあぅ………んふっ………うぁ!」  羽柴が指を出し入れすると、快感に耐えられなくなったショーンが、羽柴の腹部に突っ伏した。 「ショーン………」  羽柴が、ショーンの脚の間から、ショーンの顔を見る。  羽柴のペニスを掴んだままのショーンが、羽柴を見た。 「そこ………扱いて………」  羽柴がそう言うと、ショーンはうつろな顔つきのままコクリと頷いて、ペニスを扱いてくれる。 「いいよ、ショーン………。気持ちいい………」 「………ホント?」 「ああ」  荒い息を吐き出しながら、羽柴がニッコリと笑うと、ショーンも微笑んだ。 「ショーンも、もっと気持ちよくなろうな………」  羽柴はそう言うと、頭上に転がっているバイブを手に取った。  それはさっきショーンが銜えたせいでまだ濡れていたが、羽柴は再度それを銜えた。  さっきのショーンのように、バイブを舐め上げる。  その様子をじっと見ていたショーンは、顔つきがどんどん艶やかになっていった。  ペロリと唇を舐める。  再びショーンは、羽柴のペニスに舌を這わせた。  羽柴がバイブを舐めるのと同じ様に、真似をしながら舐め上げる。  羽柴の顔の上にあるショーンの半勃ちだったペニスも、いつの間にか完全に勃ち上がっていた。  酔いが薄らいできたのかもしれない。  羽柴は、バイブの先をショーンのアヌスにピタリと当てた。 「ショーン………息、大きく吐いて………」  ショーンが、大きく息を吸って吐き出す。  そのタイミングに合わせるように、羽柴はバイブをショーンのアナルに挿入した。 「うっ! あはっ!! ううっ………!!」  ショーンが歯を食いしばる。 「ダメだ、ショーン。息吐いて。息を詰めないで」  ショーンは大きく口を開ける。 「ハァ、ハァ………あっ………はぁ………あぁ………」 「そう、そうだ………、いいぞ………」  ゆっくりと、少しずつ奥へと押し込んでいく。 「痛いかい?」  ショーンが首を横に振る。 「………変な感じ………」  ショーンのソコが盛んに収縮しているのが、バイブを通じて伝わってくる。  真ん中まで入ったバイブを少し引き抜くと、「ふぁあああ! あぁッ、あっ!」とショーンが声を上げた。  身体が緩んだのを見計らって、奥まで挿入する。  再び羽柴の腹部に伏したショーンの背中が、ビクッビクッと震える。 「あはっ………は………あん………」  とろりとした瞳から、涙がポロリと零れる。 「ショーン………。ひょっとして、またイッた?」 「………ご、めん………なさい………」 「謝るなよ。何度でもイッていいんだから」  羽柴が優しくバイブを動かすと、「うっ、ん………」とショーンが鼻を甘く鳴らした。  きっとまたすぐに絶頂を味わえるだろう。  いつものとは違い、波紋が広がるように絶頂の波が訪れる筈だ。  幸い、羽柴が入念に解したお陰か、ショーンも余り痛みを感じていないようだ。  素直に喘いでいる様は、本当に美しく愛らしい。  ショーンは朦朧となりながらも、羽柴のペニスを愛撫する手を休めなかった。  次第に羽柴の興奮も高まってくる。 「………あぁ………ショーン………」  ショーンが、羽柴のペニスの根本にチュッチュッとキスをした。  そしてショーンは再び身体を起こし、亀頭にキスを落とす。  鈴口を舌で辿られ、ビクリと羽柴の腰が跳ねた。  どうやらショーンもバイブを挿入される感覚に慣れてきたらしい。  ショーンの口が本格的に羽柴の猛り切った肉棒を銜え、激しく頭を上下させる。  宣言通りの『ブロウジョブ』だ。  羽柴のペニスは大きいので、さすがにショーンも根本まで銜え込むことはできなかったが、それでもかなりの奥までペニスを飲み込む。 「………うっ………んふ………うっ………」  息苦しいのか、眉間に皺を寄せ、一生懸命奉仕してくれる。 「あぁ………」  羽柴は目をバシバシとしばたかせ、額に滲む汗を左腕で拭う。 「………これは………まいったな………」  ハァと大きく息を吐き出す。 「 ── 気持ちい?」  ペニスに頬をピタリと寄せながら、ショーンが訊いてくる。  羽柴は、顔を顰めて頷いた。 「すぐにでもイッちまいそうだ………」  ペニスへの直接的な刺激といい、羽柴の目の前に広がる扇情的な光景と言い………何せショーンのソコには、今も真っ黒いバイブが押し込まれている………、これでイキそうにならない方がおかしいってものだ。  羽柴は、ショーンが羽柴のモノを舐め上げているのを見つめながら、バイブの腰についたスイッチを入れた。 「 ── ひっ………あっ………うぁっハ………あぁぁああ!!」  前立腺にバイブの振動がダイレクトに響いて、物凄い快感がショーンを襲っているのだろう。  もはや勃ち上がったペニスの先から、先走りの液がタラタラとと羽柴胸に垂れた。 「イッ………イックッ………! イッちゃうよ………っ!!」 「イケよ、ショーン………イッていいよ………」 「ヤダヤダ!! 一緒にっ! 一緒に!!」  そう絶叫するショーンだが、もうショーンにはフェラチオは無理だ。  羽柴は、ペニスを掴むショーンの手を自分の手で包み込むと、そのまま激しく扱き上げた。 「………ショーン………顔、避けてろ………も…出る………」  呻くように羽柴が言うと、ショーンは首を何度も横に振って、羽柴のペニスにしがみついた。 「ふぁっ、あぁっ、あん……あっ、ああぁ! も、ダメ………!! ダメ………!!!」  ピタリとショーンの声が止まった。  ショーンの全身に、ブアッと鳥肌が立つ。大粒の汗が一気に吹き出た。 「あぁっあああぁ!!」  羽柴の目の前で、ショーンのペニスがまるで意志を持ったようにビクビクと大きく跳ねる。  それと同時に羽柴のペニスも爆ぜた。  羽柴のザーメンの一部がショーンの顔にかかる。  一瞬の空白の後、「あは…あ………」とショーンが息を吐き、羽柴の身体の上に突っ伏した。  結局ショーンも最後には射精までできたようだ。けれどただ射精するのとは違う、深い快感を得られたらしい。  ショーンの快感の波が消えないうちに、羽柴はバイブを引き抜いた。「う・ん………」とショーンが唸るが、痛みを感じているようには見えない。  羽柴は大きく深呼吸をしながら身体の下のバスタオルを引き抜き、ショーンの身体を濡らしているローションを丁寧に拭った。  そうして身体を起こすと、力をなくしたショーンの身体がソファーの下に落ちそうになって、「おっと」と羽柴はショーンの身体を膝の上に抱き上げる。  ショーンはぐったりとして、羽柴の胸元に凭れ掛かってきた。  顎を捉えて上向かせると、羽柴は派手に顔を顰めた。  図らずも、ショーンの顔に発射してしまった。いわゆるひとつの……『顔射』ってやつだ。  かなり、バツが悪い。  快感に捕らわれて、逆にあどけない隙だらけの顔つきになっているショーンの滑らかな頬に、たらりと自分の放ったモノが幾筋にもなって垂れている。 「 ── あ~~~、もう………」  羽柴は唸りながら、指で汚れを拭った。  ショーンがうっすらと目を開ける。  タオルで拭おうとした矢先、ショーンの口が羽柴の指先にパクッと吸い付いた。 「おっ、おい!」  慌てて羽柴が指を引き抜く。  ショーンは、頭を上げるのも億劫なのか、頬を羽柴の胸元にすりつけたまま、顔を上げた。 「………へへ………苦いや」 「当たり前だ」  羽柴は、ガマガエルのような顔つきをしてタオルでゴシゴシと手を拭った。  そんな羽柴に、ショーンがギュッとしがみついてくる。  ショーンの身体はまだピクピクと小刻みに震えていて、快感の余韻がまだ長引いているのが判る。ただ射精しただけでは、こうはならない。  はぁ………とショーンが吐息をつき、再び目を閉じる。  アルコールのお陰で、普段より深過ぎる快感でも怯えずに楽しめたようだ。  羽柴は、ショーンが身体を起こすまで、ゆっくり何度も何度もショーンの背中を撫で、髪にキスを落とした。
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