第3章 少年王

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 やがて乳首が完全に硬く立ち上がると〈あれ〉は先端からねばつく液体を分泌しながら、さらに細い新芽のような触手を出して吸い上げるような動きをする。引っ掻いたり、弾いたりするのとは異なる刺激は、快感と背徳感、そして恐怖を煽るだけだ。 「あっ、あ、あ……何で」  せめて辱めてくるものの正体を見てやろうと視線を下向けると、そこでは自分のいやらしく尖った真っ赤な二つの乳首が、濡れて透けた絹の上衣を押し上げて、はしたなさを主張している。そしてその二つの粒を〈あれ〉がさもうまそうにちゅくちゅくと吸い上げているのだった。 「……っ」  あまりに情けない自らの姿に〈少年王〉は顔をそらし、ぎゅっと目を閉じた。しかしもちろん祈りの時間がそれだけでは終わらないことは知っている。〈あれ〉にとって上半身への狼藉がただの前戯に過ぎないことも。  両膝を固定して、開かれた脚の間のものは、胸への刺激のためにすでに勃ち上がりはじめている。それがわかるからこそ〈少年王〉はますます惨めな気持ちになるのだ。  上半身をくすぐる〈あれ〉よりも、脚の内側に入ってこようとする〈あれ〉ははるかに太く力強い。内腿をぬるぬるとくすぐられ、思わず〈少年王〉は助けを求め叫んだ。 「嫌だっ。誰か、誰かっ!」  こんなところを人に見られるのは耐えられない。しかし、これ以上先まで、こんな異形に何もかもを奪い尽くされるのも耐えられない。筆頭賢者でも宰相でも、女官でもいいから誰か鍵を開けて。これを引き剥がして。ここから助け出して。必死の思いで叫ぶが、声はただ、地下深い石に囲まれた部屋に虚しく響くだけだ。それどころか、助けを呼んだことを責めるかのように〈あれ〉は〈少年王〉の口の中に押し入ってくる。 「んうっ」  何本もの触手状の「あれ」に入り込まれて〈少年王〉はそれ以上大きな声が出せなくなる。その表面から出る粘液は舌に絡み、その奇妙な味は舌に、体に、頭に、不思議な痺れをもたらしていった。
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