第3章 少年王

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 それだけではない。息も絶え絶えの〈少年王〉を更にいたぶるように〈あれ〉は後ろの小さな窄まりにまでも侵入を始めた。入り口を確かめるように突かれても固く閉じたままのその場所は、しかし〈あれ〉がとろとろとねばつく分泌液を出し、窄まりの襞をほぐすような動きを続けるうちに、少しずつほころんでいく。 「ひっ。嫌だ。そこは」  ぴちゃぴちゃと縁を舐めるような水音は徐々に激しい抽送に変わっていく。まずは比較的先端で浅い場所だけにぬぷぬぷと出し入れし、中が柔らかくなってきたところで一気に奥まで貫かれた。 「あああっ……!」  こらえきれず大きな声が出た。腹の奥に太いものが一気に入ってきて、不思議と痛みはないがとてつもない圧迫感が苦痛となって押し寄せる。  自分のはしたない喘ぎ声と〈あれ〉が体を貪るいやらしい音だけが響く祈りの間で〈少年王〉はただ時間が過ぎるのだけを待つ。目尻から一筋涙が伝うが、自分でもそれが悲しみのためなのか、過度な快楽のせいなのかはわからなかった。  ひときわ太い〈あれ〉が狭い場所を擦り立て、弱い場所をえぐり、高めてくる。限界を迎えると同時に性器に絡みついたものもきゅっと絞り出すような動きをして〈少年王〉はあまりに強い刺激に声すら出せないまま達した。  びゅっと白い腹に精液が飛び散り、そのあとも震える先端から残滓がぽたぽたと溢れる。〈あれ〉はまるで待ち焦がれていた餌にありついた生き物のように、ぴちゃぴちゃと〈少年王〉の精液に群がり、舐めすすった。  ——気持ち悪い。  それは神聖な祈りではなくむしろ、悪魔に身を食わせているような気分だった。  一体なぜ。どうして。こんなものが祈りだというのだろうか。これに耐えれば、国には雨が降り、民に平穏な暮らしは戻るのだろうか。  だが〈少年王〉は、そんな自分の疑いにまともに取り合ってくれる人間はどこにもいないということを知っていた。とりあえず今日の祈りの時間は終わった。しかし、明日になればまた同じことの繰り返しだ。  さんざん貪り尽くした〈あれ〉は、現れたときと同じように、ざわりざわりと音を立ててどこかへ消えていく。再び一人きりになった部屋で、冷たい石台に身を横たえた〈少年王〉はゆっくりと目を閉じた。
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