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突然ラッパの音が響いた。続いて遠くから〈少年王〉の到着を知らせる声が響くと人々が視線をそちらに向ける。もちろん〈王殺し〉も植え込みの木々の隙間から衛兵隊の列が近づいてくるのを注視した。
兵士たちが前後を守り、〈少年王〉は輿に乗せられた状態で運ばれてくる。金銀で飾られた美しい輿の上にちょこんと行儀よく座り、その左右には宰相と筆頭賢者が付き添っていた。
〈少年王〉の姿は、麻の衣だけをまとって冷たい牢の中に座っていた姿とはまったく異なっていた。銀の髪は美しく梳き上げられ、これまで見たことのないような、朝焼けと夕焼けの混ざりあったような美しい色の衣をまとっている。その肌は玉のように磨き上げられ、髪や手足は、数は多くはないものの品の良い宝飾品で飾られていた。
今まさに焼かれようとする〈少年王〉の姿はただただ美しく荘厳だった。その美しさに、野蛮な興奮に取り憑かれたようだった観衆すら思わず言葉を失うほどに。
おかげで〈王殺し〉は一瞬、あの神々しい雰囲気に人々が王を焼くという判断を考え直すのではないかと期待したが、残念ながらそのようなことは起こらない。しばし静まり返った後で、人々の興奮はさらに高まる。もしかしたら、貧相な格好をした少年を焼くより、美しく神がかった王を焼く方が彼らの好みであるのかもしれない。
磔台のすぐそばまで行き、輿は降ろされた。周囲にはたくさんの衛兵が控えていて、〈王殺し〉は〈少年王〉を奪回するタイミングを伺い必死に場の空気を読もうとする。
一気に加速して、ここから磔台まで何秒かかるだろう。いくら細く頼りないとはいえ人ひとりを咥えて走ることは難しいから、〈少年王〉自身が獣の体にしがみついてくれなければ連れて逃げることもできない。
彼が今朝のような頑なな態度のままでいた場合、何もかもは徒労に終わる。〈王殺し〉は兵士たちに殺され。〈少年王〉は磔にされ焼かれる。今はただ、あの美しい子どもの翻意を祈るばかりだった。
輿から降りた〈少年王〉の様子は普段とは違って見えた。一見堂々と落ち着いているようだが黒い目に光がない。〈王殺し〉を惹きつけて離さないあの優しく寂しい光がどこにも見当たらないのだ。凛としているというよりは、心が麻痺しているようだと言った方がしっくりくる。
まさか、祈りの時間に使っていたような怪しい煎じ薬か何かを与えられているのだろうか。判断や感情が鈍っているのだとすれば、彼は突如現れる〈王殺し〉にどんな反応を示すのだろう。
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