最終章 王殺し

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「あ、んんっ!」  突然敏感な場所を濡れた舌でまさぐられ、〈少年王〉はあられもない声をあげた。耳や首筋に触れられ既に種火は点りはじめていたのかもしれない。優しく舌でくすぐる動きにあっという間に砕けそうになった細い腰を〈王殺し〉は空いている方の腕で支える。 「あっ、そこ。そこ、だめっ」  この声は嫌がっているのでも、怯えているのでもない。〈少年王〉の反応に気を良くした〈王殺し〉は夢中になって襞の一枚一枚に唾液をまぶした。  ひくひくと収縮を繰り返しながら緩んできたそこから唇を離すと、ちょうど〈少年王〉の腰のあたりの真下の地面に小さな濡れた跡ができているのに気づく。手を伸ばすとまだ成熟しきっていないペニスが健気にも硬く立ち上がり、とろとろと快感の証を垂らしていた。 「怖がるな。痛いことも、ひどいこともしないから」  そう言いながらうっすらと開いた割れ目を指先でくすぐってやると、こらえきれなくなったのか〈少年王〉は〈王殺し〉の固く大きな手のひらに自らそこを擦りつけるように腰を振った。 「ほら、気持ちいいことだけ……」 「あっ、あっ……はあんっ」  抱き起こした体を、あぐらをかいて座った膝の中に抱き込む。〈少年王〉の頰は既にピンク色に染まり、黒い瞳には情欲が溢れている。少年から青年に変化しはじめたばかりの幼さを残す体は、しかしすでに貪欲に快楽を求めることを知っている。 「いやっ、嫌いに……嫌いにならないでっ」  喘ぎ声に混じって〈少年王〉が悲鳴のように訴えてくる。こんな愛らしい姿を見せられて嫌いになるはずなどない。意味がわからず訊き返す〈王殺し〉に、しかし〈少年王〉はいたって真剣だった。 「言われたんだ。あそこで見てた〈あれ〉も、僕の妄想だったって。心の中でいやらしいこと考えてたから、僕の心が〈あれ〉を生み出したんだって……だからっ……」  祈りの間で見た黒い影のことを言っているのだ。誰か〈少年王〉に〈あれ〉は彼の淫らな妄想が具現化したものだと告げたのだと。そして〈少年王〉は、欲望を抱くことや快楽に溺れることを恥ずべきことだと思っている。その健気さはなぜだか〈王殺し〉の興奮をより高めた。 「こんなに綺麗なものを嫌いになんかならない。触れて欲しければ、あんな化け物じゃなく俺がいくらだって触れてやる。ほら」  衣の上から乳首をかりかりと引っ掻いてやると、〈少年王〉は身悶えし歓喜に喘いだ。  ほとんど自由のない王宮の暮らしの中で、溜め込んでいた思春期らしい欲望があの煎じ薬のせいで表に出てきたことの何がおかしい。そして、あの場の空気に飲まれた〈王殺し〉は煎じ薬のせいで彼の幻想を共有し、そして——。  ふと〈少年王〉の手が〈王殺し〉の股間に触れた。既に固く猛っているものの熱さに驚いたように顔を上げる。
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