第3章 少年王

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第3章 少年王

 全身がおののく。〈あれ〉がやってくる。〈あれ〉が体に触れる。 〈少年王〉は気づけば石台の上に横たわっていた。首筋にぺたりと触れた感触に「ひっ」と小さな声をあげて体をよじるが、黒い影は少しずつ〈少年王〉の体にまとわりついてくる。 「い、嫌……」  毎日のことなのに、この恐怖と嫌悪には一切慣れることがない。黒い影は無数の植物のつるのような形をしていて、それぞれが意志を持った生き物であるかのように自由に動く。全体からヌメヌメと粘液を出しているが、ぬるつく表面からは信じられないほど器用に動き、やがて〈少年王〉が身動きできないよう体を拘束してしまう。  頰、首筋、腕、そしてひざ下、〈あれ〉はまず露出している箇所をぬるぬると滑る。それは女官たちが〈少年王〉の体を清めるときの触れ方ともまったく異なった動きで、くすぐるように軽く通り過ぎたかと思えば細くなった先端で例えば鎖骨のへこみや足指のあいだを確かめてくる。  この異様な「祈り」がはじまったのはいつだったろう。はっきりと日付までは覚えていないが、ただ膝をついて祈りを捧げるだけだった時間に、ある日を境に〈あれ〉が現れるようになった。  最初は得体の知れないものと、何が起こるかわからないことへの恐怖だけだった。だが今では〈少年王〉は、〈あれ〉が現れたときに何が起こるのかを知っている。そして、恐怖と嫌悪は増すばかりだ。  存分に露出した肌を確かめ終えた〈あれ〉はおもむろに〈少年王〉の衣服に隠された部分を目指しはじめる。  衣装の裾からするすると、すんなりとした脚の曲線を伝うようにして上ってくるそれの目指す場所がわかっているから〈少年王〉は必死に膝を閉じて抵抗しようとする。だが〈少年王〉の抵抗を面白がっているかのように、何本もの〈あれ〉がばらばらに彼の左右の膝あたりに絡みつき、一気に強い力でその両脚を割り開いた。 「嫌っ!」  下着をつけていない場所がむき出しになる。誰かに見られているわけでもないのに強い羞恥と屈辱に襲われ〈少年王〉は思わず叫び声を上げた。しかし黒い影はそれすら糧にしているかのようにますます勢いを増す。  服の中に忍び込むのももどかしいかのように、未発達の細い〈あれ〉数本が、絹の上衣の上から〈少年王〉の胸の先を捉える。薄く未発達な胸部で、服を着ていれば全く気づかれないほどささやかである場所を、しかし〈あれ〉は的確に探り当てる。 「あっ」  薄い布越しに、軽い力で引っかかれただけで思わず声が出る。びくんと、胸の先から痺れるような激しく痺れるような感覚が生まれ、それはじんわりと腹を伝って下腹部まで広がっていく。〈あれ〉に触れられるまで、存在すら意識しなかった場所なのに、今となっては軽く触れられるだけでそこは硬くしこり、布地を押し上げてくる。 「はあっ、あっ、嫌っ」  何度か軽い力で引っかかれるだけで、そこはぷくんと小さな実のように膨らみはじめる。〈あれ〉は待ち望んでいたかのように硬くなった乳首を弾く動きをする。  ピン、と刺激が加えるられるたびに〈少年王〉の体はおののき、口からはこらえきれない吐息がこぼれる。弾かれたそこが服の下、いやらしく震えるのが自分でもわかった。
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