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意識が、突然戻った。
いつもの起きる時間の癖なのだろうか。
いや、とその思考を否定する。自分は死んだはずだ。
そう言えば確か俺は魔狼の類だったはずだが、少し成長すれば空を飛べるんだったなぁと思い出す。
そんな時間もなくこんな事に……ってあれ?
目を開ける。柔らかな光が身体を包んでいる。ふと、自分が寝ている場所に視線を落とす。
自分用に作られたかのような大きさの、(極めて普通の大きさの狼だが)鳥の巣のようなものだった。
ただ、それの素材が違っていた。
とても美しい鳥の羽や、木の葉、見たことのない輝きを帯びた真珠など。
鳥の羽があるものの見た目ゴツゴツしてそうなそれはとても安らかに眠れて、とても不思議だった。
立ち上がると、周りに目を向ける。
ここは、何処だ?
不思議な場所だった。
すぐそこに海岸があるかと思えば海の水は奥の方で下に向かって落ちていく。まるでここが天空であるかのように海の方は青い空が広がっておりそしてその海の反対側の周囲の景色は大方森の木々で覆われており、出る隙間もないように暗かった。
そしてそれらの真ん中に、大きな丸いテーブルに3つの椅子が置いてある。
……そのテーブルの上に、俺は居た。
椅子にはこちらを見つめてくる3人のヒトのようなものが居る。
少し長い深緑の髪をした、すらりと背が伸び、わりとがっしりとした体格でもある男。
金色のショートヘアの、明るく元気そうな、背はそこまで最初の男に比べると高くはない男。
深い青。どこか暗さを感じさせるその雰囲気と不思議な威厳。
どれも全く違ったが唯一の共通点はそれらの瞳がこちらの全てを見透かすような不思議な感覚を及ぼす事だった。
髪色と瞳の色は同じだったがどれも美しい。
しかし3人ともこちらを見つめるばかりで何も喋らない。
「あ、あの………」
恐る恐る話しかける。
しかしその時、ハッと気づく。
ーーこの人らは、妖精王だ。
この感覚は、知っている。妖精には何度か接触した事がある。魔王様––あるじ––と互いを害する事がないように契約を結んだ事があり、その時に周囲にいた妖精らは自分に深く印象に残していった。
妖精王本人は見た事が無かったがこの人らだと感覚で分かった。
特徴でもうわかる。森の妖精王、空の妖精王、そして海の妖精王だ。
狼の姿のまま、跪こうとしたがなまじ囲まれているせいで何処をむけば良いのかわからないしこのテーブルから降りたいのだけれどこの強く感じる視線のせいで降りづらい。
おろおろとしているとハ、と気がついたかのように空の妖精王がこちらに手を伸ばす。
その手が俺の手に触れる。びくり、と震える。
逃げようにも相手は妖精王であるし失礼に当たる。
しかもなんだか他の2人の妖精王からの視線がものすごく痛くなってる気がする。辛い。
すると、空の妖精王は俺の脇に手をやると、一気に持ち上げる。
「!?おやめくださーー」
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