1074人が本棚に入れています
本棚に追加
ーーーーーー
(sideクライ)
中々寝れなかった。
起きたと同時にそう感じて、1度起きてしまったからには二度寝のできない体質を恨む。
ここに来て何日経っただろうか。この天井も見慣れてしまった。すっかり目が覚めてしまってやけに心地のいいベッドから渋々降りる。
まぁ、最近では、不安定だった気持ちが安定しているような気がする。ちょっとの事ですぐに焦ったりしてた前の自分がおかしいと思えるほどに。
「ん………」
横から声がする。エルだ。狼の姿で寝ている。
スヤスヤと寝息を立てる様子を眺めながら、魔王に言われた事を思い出す。
『エルが長期間を経てしても、戻ろうとしなかった場合はこっそり羽を使え』
何かを焦っているような、そんな雰囲気だった。思わず何をそんなに急いでいるのかを聞いたが、「急ぐことでもないが、……心の問題だ」としか教えてくれなかった。
僕も正直もう魔王が何を考えているのか分からなかった。
ここ最近妖精王達に気が付かれないようにこの部屋で隠れて居る。少し心配だったのだが、妖精王がこの部屋に来てすることと言えば、少しエルと話すくらいだ。
エルからはある程度色々教えられた。妖精王達の事についても。エル自身ですら魔王の事は殆ど何も分かっていないのだということも。
あの魔王からずっと何も知らされずに駒のように動かされているかのようで少し嫌な気分だ。
もしかしたら妖精王達も魔王の行動の理由の全てを知っているのかもしれない。というかそれで言うなら妖精王達の行動も不可解だったが、エルからなんとか聞き出すと、まぁ、成程。
エルが好きなのか。と納得した。僕はそれ以上は考えないことにした。
エルが騙したのか、とは思わなかった。本人にもそう聞かれたが、エルに対してそういう風に思うのもお門違いだし、何よりエルにそういう風に思えなかった。
心配な事と言えばグルガやエリス、セフィやクリスの事についてだ。
あの後少しだけ会ったのだがクリス以外はなんだかそわそわしていたし、エリスは僕に対しての態度もおかしかったのに加えてなんだか落ち着かなさそうだった。
魔王になにか吹き込まれたのだろうか。
僕達だけ何も知らされてないような気がして、少し嫌な気分なのだ。
まぁここでグダグダしてても仕方ないしいつか僕もあの3人にバレる。早めに魔王の所に戻った方が良いだろう。
「エル、起きて」
背中を撫でると「ん〜」と怠そうに目を覚ます。
耳がピクピク動いていて、思わずそれに触るとピクン!と耳が震える。動物って可愛いよね。うんうん。
ってこんな事してる場合じゃないんだった。
「エル、起きて!」
「ん……」
「魔王の所に行くよ!」
「んーん〜…まだあの3人に何も出来てない…」
「また会えるでしょ!」
「やだ〜……」
ダメだ。眠気で完全にやられちゃってるよね。これ。
「エル〜」
「!?っんぬぅ〜!やめろぉぉ〜」
抱き抱えるとペシペシと尻尾を僕に叩きつけて抗議してくる。相当眠いらしい。
最初のコメントを投稿しよう!