勇者のストレス

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 大体、言葉数が少なすぎるのだ。妖精王にも口数が少ないのも考えが読めないのも居るけど、あれはまた別のベクトルな気がしてくる。  「………」  また、あの目だ。なにもおしえてはくれない。  思えば魔王に会うのを誰よりも急いでいたのは僕だ。エルにそう言いまくったのも。何か魔王に期待でもしてたのか? なんて怒りが何処からかぷくぷくと浮かんでくるが、どうにも何故か怒れなくて、怒りが頭の中でミキサーにかけられたみたいに粉々の状態のまま回転する。  「…っ…とにかく、嫌がるでしょ?エルが…」  「エルが、嫌がるからだ。……エルは何故嫌がっている?」  エルが…嫌がるから?それを敢えてやろうとしているのか?何で??という疑問を押し殺し、質問に答える。  「そりゃ…なんか…結構曖昧だけど…まだ色々してもらったお礼とか出来てないからって…」  そう言うとふむ、とまた黙り込む。  「…連れて来い」  「…いいよ…もう………わかったよ……でも…」  「なんだ」  「何か、せめて何か教えて。何もわからない状態じゃ何も判断できない…」  魔王が目を細めるといつ見ても綺麗な、傷一つない白い手を顎に当てて考えこむ。  でも、考えるだけはしてくれてるし、そこに何かどうにも出来ない事情もあるのだろう。  全く、最初から教えてくれれば…。  「………」  なんか、変だ。  「……?」  またあの違和感だ。違和感は幾つかあるが、そのうちの一つに辿り着きそうな気がした。  魔王を再び見る。まだ考え込んでいる。  そこで思い至った。そうだ!これが、一つの違和感。  「待って」  魔王の右手首を掴む。  僕に何度も触れた、魔王の手だ。間違いようは無い。  魔王が目を見開く。そこで本人も何かに思い至ったようで見たことの無いくらいの焦りようが、今初めて感じられる。今まで読み取れなかった「気」が、流れ込んでくる。  魔王…お前、  「お前、魔王紋はどうした…?」  「…っ」  魔王が僕の手を振り払った。
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