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(sideセフィグラディス)
エルフは長寿の種族だ。寿命は人間よりもかなり長く、老いも緩やかだ。それ故にゆったりとした人生を送る。
動物を殺す事は基本的に無く、食生活は野菜が中心で無闇に殺すことを良しとしない。
そんな種族にとって、その何倍もの速度で生まれ、子供を生み、そして死んでいく種族は非常に目まぐるしく映る。
エルフの多くが森から滅多に外に出ないのは、能力の低く、残酷に他者からものを奪う人間を見下している面もあるが、自分に似た姿を持っているその種族の生き急ぎっぷりを見ていると目が回るような心地がしておちつかないからだ。
そういう意味で、豊かで緩やかな生活を自ら捨てたセフィグラディスは非常に珍しいエルフと言えるだろう。
彼女が勇者の仲間に加わったのは故郷の村を人間に焼かれた、という最大の理由と、両親の意思によるものである。
寧ろ両親の意思が無ければ人間への憎しみは残ったままで、決してこのパーティに入ることはなかっただろうし、最大の理由は両親の意思と言っても過言ではない。
エルフは魔法に関しては性質は異なるものの魔族と同じくらいの能力を所持している。
その文化も多くは明らかになって居ないが、エルフなぞ一生に1度会えるか会えないか、くらいの時代なのは故郷が焼かれたというその情報だけで察することは出来るだろう。
「やっと出れたー!クリスすごい!!」
元気な声を出す彼女に、特殊な呪術師と剣士の間に産まれたと言う魔導師、クリスが答える。
「エリス様!!どうですか!」
「お、おう…すげぇな…」
「まぁまぁだな」
「おまえ…っなんでクリスを煽るんだよっ!」
「お前を煽ったんだよ」
「エリス様!かっこいい…」
ぎゃーぎゃー騒ぎ出す2人と1人にセフィグラディスは何も気にすることなくただただ次にするべきことを提案する。
「取り敢えず、街に戻りましょう!!!勇者様なら生きてるよ!このままでも勝ち目はないから取り敢えず立て直そー!」
ツッコミ役が居ないこの状況に疑問を抱く者など1人も居らず、混乱の中歩き出す。
魔王城の島から出る方法は何となく全員が検討をつけており、当の本人も勿論その為の計画を練っている。
「エリス様。僕魔法で負けたのが最高に悔しかったので今魔法を使う気に余りならないのですけど…」
「!?今さっき使ったよな!?魔王城から出るやつ!何が起こったのかさっぱりだったけどよ!!」
「まず手錠にかけられた複数の魔法の解除と解錠の魔法を使い手錠を外し、牢全体にかけられている結界の解析。解析不可能だった魔王城全体にかかっている魔法はスキップしましたが何とかなりました。そして一時的な結界の抜け穴を作る為の魔法の行使、抜け穴は一瞬しか存在しない上に沢山結界があったので失敗したら大惨事でしたがそこを何とか瞬間移動の魔法に糸を通してギリギリ抜け出せました。」
「なんかよく分からねぇけどありがとな…」
「エリス様の為ですからね!!」
「因みに魔法失敗したらどうなっていたんだ…?」
「全員虚無に落ちてました」
「…!??」
クリスは上手く魔法を使わない方向に話を持っていくと、1番頼られていた自分の力無しで出る方法を考え出す。
「クリスやってよ〜」
グルガが考える横でクリスも悩みに悩み、案をとうとう出す。
「あ」
「なにか思いついたか?」
少し間を置くと彼は言った。
「泳ぎましょう」
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