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それに、良く考えればおかしな話なのだ。
僕は曲がりなりにも勇者で、人間の中ではかなり強い方だ。でも、魔王に対抗する存在として、魔王を倒す存在として、聖剣に選ばれた。でも、歯が立たなかった。
魔王に勝つにはもっともっともっと強い力が必要だと、戦って直ぐにわかったのだ。しかしこれ以上は人間の限界として恐らく強くなれない。聖剣の力も限界がある。
それならば何故僕が選ばれたのか?僕は通常の人間の限界を越しては居るが、聖剣を与えられた身としては弱い気がするのだ。だから、元々が強い、才能ある人間が選ばれるべきだった筈だ。
「なんか疲れたな…セフィ放置で良くない?」
「!?」
エリスが固まるとしばらく考え込み、言った。
「もう手段が無いなら、クリスの力が回復するまで待つしかねぇんじゃねぇか?」
まぁそうだよね。それしかないもんね。
魔王に貰った事のある転移の羽。あれも移動手段としては有効だが、貴重すぎる。1個買うのに、中流階級の者なら普通に1年暮らせる。
窓の外を眺めると、もう日が沈む前だった。
「雨になるかもな…」
雲の様子を見て、グルガがそう呟く。
「エリス様!!今夜は久しぶりに一緒に寝てくれませんか!?」
「えっ…あ、ああ。分かった」
「えっと、えっと、その前にあのお店行きましょう!そのあと……」
バタン
「俺も疲れた。自室に帰って良いか?勇者」
エリスがクリスに手を引かれて部屋を出ていくと、グルガがそう聞いてくる。
「ああ、良いよ。ごめんね。色々」
「いや、全然構わねぇぜ」
グッ!と親指を立てたあと部屋を出て、ドアを閉める音が響く。
ベッドに倒れ込むと、疲れがどっと押しよせてくる。今日は休もう。考えると更に疲れる。
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