勇者のストレス

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(sideリズアルド(?))  『ね、ねぇ…エハナトス、リズアルド…』  呼ばれて、振り返る。先程、というか今芽生えた違和感はすぐに消え、それに対して返事をする。  『なーに?メルアス?』  『なんだ?』  横に居たぼんやりとした影も、それに返事をする。こいつはとにかくムカつくが何だかんだ仲がいい。そういう認識だった。違和感も、なかった。  『お、れさ…少し不安なんだ…役に立ってるかな…なんて…』  もじもじといつもの落ち着かなさそうな、自信の無さげな感じで話す。  それに答えようとすると、横のやつが先に話し始めようとしたのでそれとなく譲ろうとした時、メルアスの後ろから何かが走ってくる。  『わっ〜!』  『!?ひぃっ!』  『なーに悩んでんの〜?』  肩に飛びついたそいつが大声を出すとメルアスはビクリと肩を震わせる。  『おい!話を遮るな!サーネル』  『は〜い』  叱りつけると横の影ーーエハナトスが言った。  『おーこわいこわい、リズアルドは怖いねぇ〜。最強サマがお怒り〜』  『ぁあ!?エハナトス、喧嘩売ってんのか!?やってやろうじゃねぇか!』  喧嘩を売られている事にすぐ気が付く。ムカついて声を荒らげると珍しくメルアスがいつもより大きい声で言った。  『あ、あの!僕、ゆ、優柔不断だし、弱いし、ぁ、アドバイスだってまともにできないから…やくにはたちたいけど、やっぱり、たててなくて…いっしょにいても大丈夫な、のかな…って……』  それに、すぐに答える。まるで、準備をしていたかのようにすぐに口から出てくる。  『んだよ、んな事か。……ばっかじゃねぇの?』  『っ…』  髪をわしゃわしゃと撫でると、うひゃ、と声を出した。  メルアスの目をほとんど隠している前髪をかきあげると、本人も気がついていないであろう意外に綺麗な顔が浮かび上がる。
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