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3日間
森は知っているよりも広かった。
「ねぇねぇーえるー」
「これみてみてー」
そして思っていたよりも様々な、知らない面が沢山あった。今の状況には途轍もなく不満だが、少なくともとても楽しく、軍の中にいるよりはマシだった。
あるじはいじめを極力消してくれてたしあるじをあるじと呼ぶことも許してくださったのだ。サザン様のような良い方も居る。
あるじをあるじとよべるようになった時からいじめは消えた。しかしあの蔑むような目と見下している雰囲気は何1つ変わらなかった。
そんな思い出したくも無いそれを振り払うように目の前に居る自然エネルギーが生み出した自然物の精霊、妖精に目をやる。因みに森の妖精は羽が緑色だ。透き通るような綺麗な羽はとても有名で共通だ。
ヒトはどうやら考えられない事にこの羽の為に勝手に妖精を殺し、奪い、装備に使ったり装飾品や調合品にも使うらしい。
あるじの軍にしても契約して、長い話し合いを通してやっと1枚、貰えるくらいでしか無いのに、だ。しかもその契約に絶対必須なのは優秀な回復手だ。羽を再生させる為の。
妖精にとって羽は象徴だ。
羽がなくなれば1日で光になって消えてしまう。
羽を生きた状態で失えばすぐに超高難易度の再生魔法を使わなければ元に戻る事は無い。くっつける事も出来るが前とは同じようには行かないだろう。
妖精を殺すなど、恐ろしい事をするものだ。
妖精王がこれ以上ヒトによる侵略が無いように注意するのに留めているのも、ヒトと敵対すれば多くの死を呼び寄せることをわかっているからだ。だからヒトが妖精にする事に対して強くは言えていない状況。
ーーだというのをあるじから聞いた。
「えるー!これおいしいよー」
「あ、ありがとうございます……」
ここは森の奥深くだというのにとても明るい。花々が光る普通では入れないと俺でもわかる空間はとても気が安らいだ。
小さな小さな自分に差し出された手の上に乗った果物を受け取ると口に含む。
基本的に俺はなんでも食べる事が出来たから渡された腐肉をいつも食べていた。
だからこそこの美味しさが衝撃だった。
こんな甘い果物、最後に食べたのはいつだったか。
確か勇者が現れてあるじが忙しくなる、その前にあるじがくれた記憶がある。だが、それ以降はあるじは忙しく、それっきりである。
「お、おいしいです……!」
思わず口からその言葉が溢れる。
「やったー!」
自分はくれた立場なのになぜか喜ばれている。
「ありがとうございます!」
お礼を言う。
それにしても今は昼なのだろうか。夜なのだろうか。昼であっても元々暗いし……木々に上すらも完全に閉ざされ分からない。
しかし、地面に咲く花や、妖精が幻想的に光るものだから割と明るい。
まぁどうせ妖精王様にここで1日自由に暮らせと言われた以上自分にはそれしか選択肢は無いのだが。自由にしてもらっているだけマシだろうか?そもそも目的がよく分からない。
そんなことを考えていると妖精達がじーっとこちらをみている。
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