帰還

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帰還

 「はぁ……」  少し憂鬱な気分で階段を登っていく。  朝起きたら飛翔の加護無しでも飛べるようになっていた。なんでだよ。  あるじがあの3人に許可した俺の預かり期間3日間。それが過ぎた。  だから一旦あるじの場所に帰ってきたのだがなまじ空島が海の上の上の上の天空だという事しか分からなかった為海の何処かにあるあるじの島を見つけるのは困難だった。  この島はあるじの城がある島であるじの城はいくつかの大きな塔で構成されている。  この階段を俺ほど登ったことのある奴もそんなにいる訳では無いだろう。それ程に登り慣れている階段だ。しかしあの3日間は楽しかったが精神的にも疲れ、休みたかった俺からすればこの階段は苦痛だった。  一番高い塔。そこの最上階の奥の魔王の間–––ではなく、その隣にあるあるじの自室の前に立つ。  勘が鋭くなっている気がしてくる。あるじは怒らないだろうか。という不安に対してあまり嫌な予感はしない。  「あるじ。エルです」  「入れ」  間を置くと返事が来る。底から響くような声だがいつ聞いてもこの声はかっこいいと思う。俺なんかとは違う。  「失礼します」  因みにこの木の扉には下の方に四角く穴が開けてある。そこに特別な魔法がかけてありいつもは開いてないように見えるが何かが通るときだけそこに穴があくようになっている。俺はドアとか扉開けられないしとても便利だ。  そこをくぐると、色々な羊皮紙に何かを書き込んでいるあるじの姿がある。  それは魔族だと言うに相応しい姿と格好だがヒトだと言われたらそう見えなくも無い。つまり魔王にはぱっと見見えないが、それは見た目だけの話でありその存在感は他とは一線を画していた。未だにこの威圧感には慣れない。  「あるじ。もう聞いておられるかと思いますが………」  「よく生きて帰ったな。サザンから全て聞いている。ご苦労だった。妖精王は何故お前を預かりたいなどといったのかはわからないが……」  その言葉に胸が熱くなる。単純に嬉しかった。  あるじの仕事はひと段落したようで羊皮紙を脇に置くと顔を上げこちらを見る。するとあるじが眉を顰めた。  何かしてしまっただろうか。  そう首をかしげる。  「あるじ、何かご無礼を……」  「……………ふふ…」  どうしたんだろうか?あるじは何かを堪えているようだった。怒らせてしまったのか?  「くははははははは!エルよ!妖精王の加護を3つもぶら下げて魔王城に帰ってくるとはな!はははは!そう言うことか。妖精王の行動も理解できる!今後もエルを諦める事は無さそうだな!くははははは!」  笑い始めたあるじにどうすれば良いのかわからず佇む。  妖精王の加護?  「あ、あるじ……?」  一頻り笑っていたあるじだったが笑いを収める。未だに楽しそうな顔のままこちらを見る。  「エルよ。お前、何か変に思ったことはないか?ここにくるまでやあの妖精王の所に居た時、だ」  変に?そりゃあ意味わからない事はたくさん起きましたとも。ええ。襲われたり惚れたとか言われたり空飛ばされたり。ええ。  「……?と、くにありませ……」  もちろんそのまま言うわけにはいかないし他に心当たりはあまりなかったから言いかけたが少し考え直す。  少し頭に血を回す。何かあっただろうか?と再考するがあんまりない気がする。  あ、そういえば……と割と重要な事を思い出す。
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