1. 雨上がりの出会い

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 屋上に続く踊り場は、ちょっとした秘密基地だった。  教室に居場所のない孤独を隠すにはちょうどいい。昼休みの残り時間が嫌というほど長くて、階段に腰掛ける天音は、膝に頬杖をついてうたた寝をしていた。  地味なボブカットで幼い顔立ちは、小柄な体格と相まって人形のようだ。寝ている当人は、まだ花の蕾だと信じている。進学校へ無理に入って場違いな気がする上に、オンナの魅力もないとあっては、ふわふわの綿毛に包まれたプライドでも傷ついてしまうから。  綿貫天音15歳、一人ぼっち歴、約二か月。つまるところ剣城高校には、駅前のカフェへ寄り道するような、親しい間柄の友はまだ見つかってはいないのだった。  梅雨に入り、昨日から降り続けた雨はもう止んだらしい。  階段の天辺にあるドアのガラス窓から虹色の光が差し込んで、天音の影を階段に形作る。窓に、ステンドガラスを模したシールを張ってあるのだ。こんな学校の辺境地を飾り立てる、風変わりな人間は誰なのだろうか、考えたこともなかった。  彼らと出会う、この時までは。  
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