6. 夏色迷走

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「あいつ、中学まではバスケ部で活躍していたの。でも、高校に入ったときすっぱりやめた。せっかく進学校に入ったから、勉強に専念するつもりだって」 「頑張り屋さんなのですね。それで、文化系の園芸部に……」 「嘘つきなのよ、潤は」 「えっ……」 「美樹本さん。綿貫さんには僕から話します」  混乱する天音にチェアをすすめ、二人も席について猿渡の昔話を始める。 「猿渡君はバスケの才能が人より抜きんでていた。一年生の時から試合にも出てたらしい。けれど3年の引退試合で、彼はスタメンを外されてしまった。それがつらかったんだと思う」  心を痛めたようなみちるの表情に、天音は「どうして?」という言葉を飲み込んでしまう。 「大人に近づくと、才能が優れていても、認めてくれる人ばかりじゃないんだ」 「身長が足りなかったから。たぶん、潤自身はそう思っているの。バスケを続けていれば、事実と向き合う日がいずれ来る。それを避けたいと思う気持ちは、何となくわかるけれど」
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