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「よくご存じですね、美樹本先輩は」
「潤とは、幼稚園からの腐れ縁だからね」
美樹本も、珍しく物憂げな表情でため息をついた。
「そうなのですか。私、猿渡先輩に悪いことをしてしまったかもしれません」
天音はためらいがちに、先日の七夕の短冊をめぐる話を、二人に打ち明けてみた。
「それは、綿貫さんのせいじゃない。猿渡君がこれからの進む道を考える。そういう時期が来たんだよ、きっと」
「進む道……」
みちるの言葉を反芻し、天音は大きく頷く。
「『悩みは若者の特権だ』と、泉先生も言っていました。猿渡先輩は若いから、まだまだ人生に悩むことが多いのです」
「泉先生は、生徒の人生相談もされるおつもりかしら」
「綿貫さんは猿渡君より、もっと若いよ」
みちると美樹本が、顔を見合わせて苦笑した。
「そういえば! 私も大きな悩みを、泉先生にご相談したのです」
天音ははっとして、夏服のポケットに手を入れ、取り出したスケジュール帳を開いた。
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